「日本の政治に望むことはできるだけ経済に関与しないということだ。政治の閉塞を脱するにはガラガラポンが必要だ」
元経団連会長で中東協力センター会長の奥田碩氏(トヨタ自動車相談役)は2011年8月25日、トルコのイスタンブールで開いた経済産業省・中東協力センター主催の第36回中東協力現地会議で日本の政治について意見を求めた私にこう強調した。
原子炉プラント商談は盛り上がらず
会期中にリビアのカダフィ政権の崩壊など、今年初めから進展した中東・北アフリカの民主化運動が新しい局面に入る中で開かれた同会議には約300人の日本のビジネスマンが参加するなど、中東・北アフリカ市場に寄せる産業界の関心の深さを示した。
しかし日本が官民で推進してきた原子炉プラント商談については民主党政権の原発見直し政策もあって盛り上がらず、「アラブの夏」以降のアラブ情勢の先行きも流動的とあって、ビジネスの方は模様眺めの空気が支配的だった。
トルコは中国を超える11・0%の経済成長を記録
ただ主催地のトルコでは2011年第一四半期には中国を超える11・0%の経済成長を記録するなど民間消費、民間投資とも旺盛で、エルドアン首相の率いる保守・中道右派の公正発展党(AKP)政権は2011年の総選挙でも得票率を伸ばし、2002年の政権獲得以来、中東・北アフリカ随一の安定政権ぶりを示している。
ただ、地元紙は日本の政治について「5年間に5人の首相」といった冷めた報道をしている。しかし日本の産業界に対する期待は強く、来賓としてあいさつしたトルコのアハメッド・ヤクジュ経済省次官は「日本はトルコの有力貿易相手国だが、日本の潜在的可能性はまだ十分に引き出されていない。もっと多くの対外投資が必要だ」と強調した。
長谷川洋三