米アップルの社員が、スマートフォン「アイフォーン(iPhone)」の試作機を飲食店に置き忘れ、第三者の手に渡った可能性が報じられた。
アイフォーンをめぐっては昨年も同じような騒動が起きている。試作機を拾った人物が米IT系ブログメディアに売り渡し、アップルが公式発表する前に機器の特徴がインターネット上で公表されてしまったのだ。情報漏れには特に敏感と言われるアップルが、2年続けて同じ失敗を繰り返したのだろうか。
200ドルで売買サイトに出品された?
米オンラインニュース「CNET」の2011年8月31日付記事によると、アイフォーンの次期モデルと思われる試作機が7月下旬、サンフランシスコのメキシコ料理店に残されていたという。アップルの社員が持ちかえるのを忘れたようだ。数日のうちにアップルが警察に捜索を依頼し、試作機が紛失した当日に店にいた20代男性が特定された。だが捜査員とアップルの担当者が男性の自宅を訪ねたところ、「電話機のことは知らない」と全面的に否定。家の中も捜索したが何も見つからなかったと、CNETの情報筋が明かしている。
記事では試作機が、物品の売買、交換情報を掲載するコミュニティーサイト「クレイグズリスト」に200ドルで出品された可能性に触れているが、真相は不明だ。新型アイフォーンの形状や特徴、現行モデルのアイフォーン4との違いも情報が一切出ておらず、誰の手に渡ったのかも含めて不確かな点が少なくない。
実はアイフォーン4も、発売2か月前の2010年4月に試作機が「流出」して大騒動になった。アップルの社員が酒場に置き忘れ、近くに座っていた男性が拾って持ちかえったという。しかもこの男性は、米ITブログメディア「ギズモード」の編集者と接触し、試作機を5000ドルで売却したというのだ。その後ギズモードは、「新型アイフォーンの特ダネ記事」として、機能を写真付きで紹介、話題をさらった。
だがアップルが黙っていなかった。試作機を無断で売り払った男性はその後、拾得物横領罪で起訴されたのだ。編集者も家宅捜索を受けたが、不起訴処分となっている。
「ある種のマーケティング」と疑う声も
アイフォーンは、例年6月に開かれるアップルの開発者向けイベントで新作が発表されるのが「恒例」となりつつあった。しかし2011年6月のイベントでは「アイフォーン5」の「お披露目」は見送られ、今日に至るまでアップルから発売日を含めた正式なアナウンスはない。
それでも世界的な人気を誇るアイフォーンだけに、次期モデルのうわさは続々と出ている。アイフォーンの製造会社が本社を構える台湾のITニュースサイト「DigiTimes」は8月29日、「画面サイズはアイフォーン4より小さい3.5~3.7インチで、背面は金属製」との予測記事を掲載した。発売日をめぐっては「2011年9月か10月」という説が出回っている。米国では、アイフォーンを取り扱う通信会社がAT&T、ベライゾンの2社にスプリント・ネクステルが加わり、大手3社による販売態勢が実現するのではないか、と伝えられた。
一方、開発中の製品に関する情報統制が厳しいことで有名なアップルが、2年続けて「社員の置き忘れ」といったミスでアイフォーンの新作を外部に漏らすだろうか、と考える向きもあるようだ。今回のニュースを報じた各ネットメディアの記事のコメント欄を見ると「本当に置き忘れただろうか。クサいな」と疑う人だけでなく、「ある種のマーケティングなのでは」と少々うがった見方も出た。