「消費税が医療現場を追い詰める」 医療関係者が市民セミナーで訴え

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   消費税が病院の損税になっていることを知ってもらおうと、市民セミナー「医療と消費税」が2011年8月21日、東京・日比谷公会堂で開かれた。日本医師会と四病院団体協議会(日本病院会、日本精神科病院協会などの病院団体連合)の主催。消費税是正を目指す運動の第一弾。医療関係者が6割、一般が4割で、1800人以上の聴衆が集まった。

   医師・作家の海堂尊さん、ジャーナリストの堤未果さん、今村聡・日本医師会常任理事の3人が基調講演、続いてパネルディスカッションが開かれた。

医療を民営化したアメリカの失敗

   海堂さんは「医療とお金」をテーマに、医師や病院は国の医療費削減政策によって貧しくなっていること、国はもっと医療に投資する必要があること、それなのに、国民・患者は相変わらず「お医者さんは金持ち」と誤解していること、を指摘した。

   著書『ルポ貧困大国アメリカ』で知られる堤さんは、医療や教育を民営化し、商売にしたために起きた米国の惨状を強調した。さらに菅首相が積極的だった自由貿易協定は、日本の医療市場を米国医療資本に明け渡す危険性があると警告、「国民皆保険制度を守ろう」と訴えた。

   日本医師会で税制を担当する今村さんは、病院が薬や建築、医療機器の購入に消費税を払いながら、医療費が消費税非課税になっているために、病院の負担になっている仕組みを説明した。消費税5%の現在で、一般病院で1年に数千万円、大学病院では3億6000万円もの負担になっているという。

   パネルディスカッションでは四病院団体協議会税制委員長の伊藤伸一・大雄会第一病院(愛知県)理事長が「診療報酬に消費税分を反映した」という国の主張がいかに不十分、不合理かを解説。税理士の船本智睦さんは医療界全体で消費税は6兆円の負担になっており、17兆円の関連生産額が失われているとの試算を示した。

   また、医療ジャーナリストとして参加を求められた筆者(田辺)は、消費税は大企業・輸出企業・富裕層に有利で、病院や介護施設、低所得層、小企業いじめになっている不公平税であることを強調した。「このままで消費税率が上がると、医療は崩壊する」とし、パネル参加者全員が、国の早急な是正が必要との意見だった。

(医療ジャーナリスト・田辺功)

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