半年後に生産を終える富士重工業(スバル)の軽商用車「サンバー」の人気がにわかに高まっている。2011年に2回発売した青いWRC(世界ラリー選手権)カラーの限定車はいずれも完売。また、専用車として指定されている運送業の「赤帽サンバー」は、全国のオーナードライバーから注文が増えている。
スバルは軽自動車の自社生産から順次撤退しており、サンバーは最後に残った車種。2012年2月の生産終了が近づくにつれ、惜しむ声が高まりそうだ。
軽はダイハツから供給を受けることを決める
富士重は4月にステラの生産を終えた。これにより、同社の軽乗用車はすべてダイハツ工業からのOEM(相手先ブランドによる生産)調達に切り替わったことになる。現行のステラはムーヴ、プレオはミラ、ルクラはタントエグゼのバッジを変えたモデルだ。サンバーも2012年2月以降はダイハツからハイゼットの供給を受けて販売を継続する予定になっている。
富士重が軽の自社開発・生産から撤退すると発表したのは2008年4月。水平対向エンジンや4WDシステムを積む小型車、中型車に経営資源を集中するために決断した苦渋の選択だった。世界シェア1%の小メーカーが生き残るためには、二兎は追えないと判断。国内ローカル商品の軽はダイハツから供給を受けることにした。
こうして消えることになった自社生産のサンバーだが、その成り立ちはユニークでファンが多い。まず、駆動方式はポルシェ911と同じRR(リアエンジン・リアドライブ)。エンジンは軽では数少なくなった4気筒(ほかにはダイハツ・コペンなど)。足回りはこれも軽では珍しい四輪独立懸架だ。また、車体はモノコックではなくフレーム構造。前輪のホイールアーチの張り出しは乗員のシート横にあり、足元が広いフルキャブタイプとなっている。
一般のスバルファンも「最後のスバル製軽」と注目
サンバーは富士重がスバル360で自動車事業に参入した1958年から3年後の1961年に発売された。モデルチェンジを重ねながらも、RRの駆動方式やフレーム構造、四輪独立懸架は受け継がれている。基本構造が変わらないだけに古さやオーバースペックも目立つが、トラック、バンとも耐久性や使い勝手は評価が高い。エンジンに専用部品が組み込まれる赤帽サンバーは、オーバーホールなしに30万キロ走った例もあるという。
スバル製サンバーが2012年2月に生産終了になると聞いて、赤帽のオーナードライバーの間では、いま使っているサンバーの耐用期間がまだ先にも関わらず新車を発注する動きが広がっている。また、一般のスバルファンも「最後のスバル製軽自動車」として注目し始めた。2012年3月からはトヨタ自動車と共同開発中のスポーツカーを生産開始するため、サンバーの生産終了時期は動かせない。スバルの軽生産は繁忙のうちに54年の幕を閉じることになりそうだ。