トーマツに続き、あずさ監査法人が50人の希望退職の募集を開始した。約200人いるアドバイザリー・サービス部門の人員を対象に削減。企業の内部統制にかかわるコンサルティング業務の減少に伴う措置だ。
大手監査法人では2010年に新日本監査法人、11年7月には監査法人トーマツが公認会計士らを対象に、いずれも400人規模の大リストラに踏み切っている。監査法人も不況にあえいでいる。
監査業務は人員「増やしている」
あずさ監査法人は、国内23か所に拠点を構え、公認会計士を含む約5900人(6月末時点)の社員を抱えている。監査証明やコンサルティング業務などのクライアントは約4900社にのぼる。
希望退職者の募集人数は50人と、新日本やトーマツに比べると少ない。しかも、「監査証明業務は(リストラの)対象ではない」(あずさ監査法人)。公認会計士を減らすのではないと強調する。
公認会計士については、8月22日から新規採用のエントリー受付を開始している。公認会計士試験が行われる12月までに採用面接などを行う予定だ。採用人数は現時点で未定だが、昨年は約290人の公認会計士試験の合格者を採用した。
法人全体でもこの3月末から3か月で、社員は約100人増えている。そういった中でのリストラだ。
今回のリストラは、企業へのコンサルティングを手がける部門が対象。なかでも「内部統制報告制度」の分野。2006年の会社法や金融商品取引法の施行によって企業が対応を求められ、これまでは売り上げを伸ばしてきたが、その「特需」が出尽くしたことによる。
あずさ監査法人は、同じコンサルティング部門でも現在は金融機関向けコンサルティング・サービスに力を入れており、4月には子会社を設立したほど。「内部監査は需要が減っているが、金融アドバイザリーなど他は増えている。需要によって人員が増減するのはコンサルティングの分野ではあること」と説明している。
公認会計士の採用増が命取り
とはいえ、大手監査法人の経営状況は厳しい。トーマツは9月末を退職日として440人の希望退職を募集中だ。この中には公認会計士も多くが含まれている。あずさ監査法人も今回は監査を担当する公認会計士の削減には手をつけていないが、給与や人事制度の見直しを進めており、「無傷」ではない。
リーマン・ショック後の景気の低迷で、株式公開(IPO)支援は激減。企業買収などに伴う財務・リスク関連のコンサルティング業務も減り、強化してきた企業の内部統制への対応も一巡し需要が薄れた。さらにはクライアントからは監査報酬の引き下げを求められ、監査法人の収入は減るばかり。その一方、これらの需要を見越して公認会計士を大量に採用してきたことが裏目に出て、収益を圧迫した。
弁護士とともに高収入で安定しているとされた公認会計士の「受け皿」だった大手監査法人に「冬の時代」が来ていることはたしかだ。
一方で、公認会計士は試験制度が新しくなり、かつては年間1000人程度の合格者だったのが、最近では3000人を突破するようにもなった。空前の就職難。あぶれた公認会計士は行き場を失っている。