東日本大震災の影響で国内景気の先行きが不透明ななか、就職活動に苦戦する学生は少なくない。一方で、内定がもらえた学生の中には、企業に「囲い込み」をされ、バブル期並みの「拘束旅行」も出現しているというのだ。
毎日コミュニケーションズが2011年8月9日に発表した、2012年卒業予定の大学生を対象とした調査によると、7月の内々定率は53.0%で、前年同月比1.5%減だった。4月と比べると持ち直してきてはいるが、東日本大震災の影響はまだ残っている。
研修やセミナーの名目で泊まりがけ
実は震災前の2011年春卒業の大卒者就職率も、前年比マイナスだった。もともと状況が芳しくなかったところに震災が直撃したのだ。2012年卒の就職率がこれから急速に好転する見通しは立っていない。
「悪条件」となった今年の就職戦線で内々定を勝ち取った学生は、企業から「拘束」されるケースが目立つようだ。採用を予定している学生が他社の試験や面接を受けられないようにするため、旅行に連れ出す会社もあるという。
「拘束旅行」は、1980年代末~90年代初めの「バブル景気」のころ、売り手市場だった学生の新卒採用でたびたび行われた。費用は会社持ちだが、外部との連絡を遮断されるなど徹底して「囲い込み」をしたようだ。当時の体験談の中には、「ハワイに行った」「内定をもらっていた金融機関に旅行に連れて行かれそうになったが、別の会社への就職を決めたので断った」といった話が見られる。
「就職超氷河期」と言われる昨今、バブル期と同じような事例が本当にあるのか。ブラック企業アナリストの新田龍氏に聞くと、「確かに今年は、宿泊を伴う研修という形で内々定者を拘束するケースが増えています」と話す。ただし、バブル期の「拘束旅行」は、採用する学生に対して企業側がイメージアップを図る意図があり、その目的はレジャー的な要素が強かった。だが最近のケースはあくまでも研修やセミナーという名目で、学生としても参加せざるを得ない。