NTT株売却は困難との見方が一般的
政府保有資産の処分で可能な限り財源を確保しようと言うのは、誰が次の首相でも変わらない。不要不急な土地などを除き、大きいところではNTT、JT、東京メトロなどの株の売却が検討されている。このうちNTT株は政府に株式の3分の1の保有義務があり、重要事項への拒否権を維持するためにも、売却は困難との見方が一般的。
これに対し、もっとも売却が現実味を帯びるのがJT株だ。現在の国の出資比率は、法律で義務づけられた50%だが、JT法を改正して、NTT株と同様に3分の1に段階的に引き下げようという声が強まっている。これによる売却収入は6000億~1兆円程度が見込まれる。
東京メトロ株の売却は東京都との関係という難しい問題がある。現在は非上場で、出資比率は国53.4%、東京都46.6%。国が保有分(簿価約1700億円)の売却検討と報じられた7月下旬、東京都は「事前に相談がない」と国土交通省に抗議する騒ぎになった。東京メトロは民間鉄道業者と比べても利益率など優良会社で、株式の市況が回復した暁には、上場すれば時価総額は5000億~6000億円との見方もある。
ただ、都は都営地下鉄との統合を求めている。統合で経営一体化による効率化、利用者利便向上とともに、都営の累積損失4300億円を片を付けたいという狙いだ。しかし、少しでも多くの売却益を得たい国の思惑とはかみ合わない。都は「(国が売るなら)都が4%購入して過半数を持つ」(猪瀬直樹副知事)と牽制するが、都が過半数を握って赤字を抱えた都営地下鉄と統合することになると思えば、投資家が東京メトロ株を高く買うとは思えず、高値で売却して復興財源に充てようという政府の狙いは空振りに終わりかねない。こうした事情から、東京メトロ株売却の見通しは立っていない。