中国の漁業監視船2隻が尖閣諸島周辺の日本の領海に侵入した問題をめぐり、その狙いについて様々な憶測が広がっている。
そのうちのひとつが、「対中強硬派」として知られている前原誠司前外相が民主党の次期代表選に臨むにあたっての「ゆざぶり」ではないかという説だ。
中国側は「パトロール」主張
枝野幸男官房長官の発表によると、2011年8月24日午前6時半頃、「漁政201」と「漁政31001」が尖閣諸島の領海内に侵入、30分程度航行した、「漁政201」は、7時40分過ぎに、再び領海侵犯したという。監視船は、海上保安庁の巡視船に対して、無線で尖閣諸島の領有権を主張したという。
外務省の佐々江外務事務次官は程永華駐日中国大使を呼び、「尖閣諸島は、歴史的にも国際法上も、日本固有の領土であることは疑いない」などと述べた上で抗議している。
一方の中国側は、外務省の馬朝旭報道局長が8月24日夜、談話を発表。談話では、
「尖閣諸島は古くから中国固有の領土であり、中国は、疑うより余地なく主権を持っている」
と従来の見解を繰り返した上で、
「漁業監視船は関係海域をパトロールし、正常な漁業活動の秩序を維持している。中国は、すでに日本に立場を伝えている」
領海侵犯はパトロールの一環だとの主張を展開した。これだけでは中国側の狙いは分からないが、様々な可能性が指摘されている。中国側は、10年9月の漁船衝突事故以降、監視線でのパトロールを強化。特に、今回領海侵犯した「漁政31001」は航続距離が長く、最新鋭の設備を備えているという。
防衛問題に詳しい佐藤雅久・自民党参院議員はツイッターで、
「日本の政治空白、前原氏を牽制との見方もあるが、これら挑発は今後も続く可能性大だ。外に目を向けなければならないが、今、内政(代表選挙)で手一杯、内向き」
と書いている。
次期首相で「日中関係に不確実性」
一方の中国側からも、前原氏が日中関係に影を落とす可能性を指摘する声が続出している。例えば前原氏は外相時代の10年10月18日の参院決算委員会で、中国がレアアース(希土類)の輸出を止めたことについて、「中国の対応は極めてヒステリック」と批判を展開。このことが、中国側の反発を買ったという経緯がある。上海の東方早報は、このことを念頭に、
「前原氏が中国と安定的な関係を構築して、北朝鮮の核問題を打開できるかどうかは不透明だ」
と前原氏を警戒。
新華社通信は8月25日に配信した日本の政局記事の中で、ある小沢派の議員の話を紹介。この議員は、前原氏の尖閣諸島問題への強硬姿勢を「『脱小沢』的」と表現した上で、今後もトラブルを引き起こす可能性を指摘。「前原氏は非常に危険だ」と懸念を示したという。
また、香港のフェニックステレビは、領海侵犯に対して日本が中国に抗議したことを伝えるなかで、
「タカ派の代表の前原誠司氏は菅直人首相の後継になるとみられており、日中関係に不確実性がもたらされるだろう」
と、両国関係について悲観的な見方をしている。