東日本大震災に伴い、特例法で4月の統一地方選から延期されていた被災地の地方選挙が動き出した。8月19日告示、28日投開票の仙台市議選をはじめ岩手県知事選、同県議選など、9月11日までに福島県を含めた被災3県で計30選挙が集中的に実施される。
多くの住民がなおガレキと闘い、避難生活を強いられているだけに、有権者の所在確認、投票所の確保などで選管も苦労している。
期日前投票に力を注ぐ
大震災で町長が死亡した岩手県大槌町の町長選と任期満了に伴う町議選(定数13)は23日告示、28日投開票。役場庁舎を含む町中心部が壊滅。仮設住宅の大部分が内陸部に建設され、多数の住民が元の住所地を離れた。有権者は公職選挙法の規定で、投票日当日は住民票がある地区の投票所でしか投票できない。遠くの仮設住宅に入居した被災者らの投票をどうするか。
町選管は期日前投票に力を入れている。役場(仮庁舎)で投票できるとあって、町内の4方向から役場へバスを1日1往復走らせ、各地域の有権者にPRしている。
各選管が手を焼くのが、有権者の所在確認。仙台市は市内168投票所のうち11カ所が震災で場所を移転。その対象有権者2万8656世帯に投票所移転を告知するはがきも送ったが、170通が戻ってきた。
大槌町選管も所在確認できなかった有権者が159人に上る。岩手県陸前高田市では9月11日、市議選、知事選、県議選の「トリプル選挙」があるが、8月16日現在で約250人の所在が分かっていない。
福島、宮城の県議選は再延期
選挙運動にも影響が出ている。仙台市議選では「全体で約2000万円になる街宣車への公費負担を軽減し、復興財源に充てよう」と、一部現職を中心に、街宣車自粛を申し合わせたが、「街宣車を使わないと投票率が下がる」「支持基盤が固い現職が有利」と反発の声も出ている。
仙台市、大槌町、釜石市選管などには立候補・同予定陣営から、「仮設住宅の集会所を個人演説会場に使いたい」との要望が相次いでいるという。これまで使っていた学校や公民館などの一部が失われたのに加え、街宣を自粛する代わりに、ということで、「移動手段を失った仮設住宅の住民もじっくり政策を聞ける」と、歓迎する声がある一方、「被災者の憩いの場」である集会施設を選挙に使っていいのか、という慎重論もあった。
総務省は岩手県選管の問い合わせを受け、最終的に「可能」との判断を示したが、「時間切れで準備が間に合わない」と恨み節も聞こえる。
一方、被災地の首長・議員選について、9月22日までの実施期限を12月31日まで延期できるようにする改正臨時特例法が成立したことを受け、宮城県は県議選を先送り。死者・行方不明者4005人(8月17日現在)が出た石巻市の意向を踏まえた措置で、「選挙を適正に執行できないため実施は困難」としている。同県内では女川町長選・町議選、名取市、亘理町、山元町でそれぞれ議員選・議員補選を延期した。福島県も、県議選と8市町村の選挙を再延期。福島第1原発があり、警戒区域(半径20キロ圏)に指定されて役場の機能も移した大熊町の町長選・町議選のほか、双葉町の町議選などが含まれる。