最西端・与那国島に自衛隊駐屯地 住民から反対論続出

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   日本最西端の与那国島への自衛隊の配備が、いよいよ現実味を帯びてきた。人口減少に悩む町側が3年ほど前から自衛隊の誘致を進めており、北沢俊美防衛相が、初めて配備の時期に言及した。だが、住民からは「有事の際に狙われる」といった反対論も噴出、実現までには曲折がありそうだ。

   自衛隊の誘致をめぐっては、2008年8月に町議会が誘致要請の決議を賛成多数で可決。任期満了にともなって09年8月に行われた町長選では、誘致に積極的な現職の外間守吉(ほかま・しゅうきち)氏が反対派を破って当選。

15年度末までに沿岸監視部隊を配置

与那国空港前には誘致派と反対派の垂れ幕が並んでいる(09年7月撮影)
与那国空港前には誘致派と反対派の垂れ幕が並んでいる(09年7月撮影)

   さらに、10年12月に策定された政府の中期防衛力整備計画(中期防、11~15年度)には、国境付近の防衛体制が手薄なことをふまえて、

「南西地域の島しょ部に、陸上自衛隊の沿岸監視部隊を新編・配置するとともに、初動を担任する部隊の新編するための事業に着手」

という文言が登場。駐屯地建設に向けた動きが加速していた。

   そんな中、北沢防衛相は2011年8月23日の記者会見で、

「それ(中期防衛力整備計画)にあわせて11年度で約3000万円の調査費を計上し、その予算を執行している。中期防の15年度末までには沿岸監視部隊は配置したいと考えている。与那国島でインフラ状況の調査などを行っているので、そういうものを集約しながら、ターゲットは15年度末と考えている」

と発言。部隊の配備計画を進めていることや、実際の配備時期について言及したのはこれが初めてだ。さらに防衛省は、12年度の概算要求に土地購入費や建設費を盛り込むとの観測もある。

   現時点では、島内の南西部にある牧場地に陸上自衛隊の沿岸監視部隊の駐屯地を建設し、隊員100人程度の駐屯が計画されている。レーダーを使って、沿岸海域を通る船を監視するのが主な任務で、使用する土地は、大半が町有地だという。

町長は経済的メリットを強調

   だが、実際に誘致が行われるまでには、まだまだ紆余曲折がありそうだ。地元紙の八重山毎日新聞によると、7月12日には、島内で初めて住民説明会が開かれている。

   誘致推進派の外間町長は、

「自衛隊が常駐する地域では、隊員が地域に積極的に参加しており、少なくとも地域に混乱を招く組織ではないと実感した。町に経済的な効果もある」

と経済的メリットを強調、理解を求めた。だが、100人いた町民からは、

「宮古のレーダーでこれまで問題なかったのにどうして今、与那国なのか」
「自衛隊を与那国に誘致した場合、有事の際は住民が戦闘に巻き込まれる」
「誘致することで島が分断される」
「直前の防災放送だけでは知らない人もたくさんいる」

と反対論が続出。

「誘致は住民投票で決めるべき」

   との声も出たが、外間町長は、「誘致問題が争点だった町長選や町議選で、すでに民意は示された」という立場で、住民投票の実施には否定的。出口が見えない状況だ。

   さらに、2紙ある県紙の社説も、

「自衛隊が駐屯することになれば、中国だけでなく台湾にも無用な警戒心を与えることになるのではないか。(略)一定数の自衛隊と家族が駐屯すれば選挙など町政の重要事案のキャスチングボートを握りかねない。自衛隊の意向が反映される島になる恐れがあることを指摘したい」(8月22日、沖縄タイムス)
「拙速に物事を進めると将来に禍根を残すという謙虚な思慮が見当たらない。まして、駐屯の是非を民意に委ねようという姿勢はみじんもない。むしろ、造ってしまえばもう撤去はできまいという計算すら見え隠れする」(8月22日、琉球新報)

と警戒心をあらわにしており、現時点では地元世論の理解を得るのは簡単ではない情勢だ。

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