「まだ死を認められない」 不明者多数のまま迎えた初盆【岩手・大槌発】

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倒れた墓石の上で迎え火をたくお年寄り=大槌町の江岸寺で
倒れた墓石の上で迎え火をたくお年寄り=大槌町の江岸寺で

(15日大槌発=ゆいっこ花巻;増子義久)

   倒壊した墓石群…。その隙間を埋めるように迎え火がたかれ、花が手向けられた―。初盆を迎えた「3・11」の被災地では14日、各所の寺で犠牲者を弔う祈りが続いた。


   大槌町の市街地にあった曹洞宗・江岸寺―。本堂などの建物は跡形もなく、あちこちで墓石は崩れ落ちたままになっている。小川芳春さん(75)は身内や親戚など15人を津波にさらわれ、まだ半分が行方不明のままだ。「本家の墓や自分が入る墓など3基があったが、無事だったのは実家の墓だけ。早く元通りに修復し、墓守に徹したい。それが残された者の役目だと思う」と手を合わせた。


   敷地の一角に無残に破壊された梵鐘(ぼんしょう)や胴体が割れたお地蔵さんなどが集められている。「それにしても神や仏は随分と手荒い試練を与えてくれたもんだな」と初老の男性がつぶやいた。8月6日現在の大槌町の犠牲者は797人で、行方不明者は653人。うち219人がまだ死亡届を出していない。


   「初盆を機会に心に区切りをつけようと思った。でも死を認めるにはもう少し時間がほしい」。大槌町出身で現在は北九州市に住んでいる千葉千佳子さん(50)は川崎市在住の妹の真理さん(41)と一緒に大震災後、行方不明の母親(74)の消息を求めて避難所をさ迷い歩いた。


   「買い物用のカートを引いている姿を見た」という知人の証言が唯一だった。先祖を祀(まつ)った墓石も土砂の下に没していた。泣きながら掘り起して、やっとこの日の初盆に間に合わせた。「先祖の霊には手を合わせたが、母親の死亡届はまだ出していません。俳句に興じる気丈な人でした。だからまだ、どこかで生きているような気がして…」と千佳子さん。


   かつての面影を失ったふるさと…。それでも全国各地から親やきょうだいたちが戻ってきた。満月に照らされた瓦礫(がれき)の一角から盆踊りの音色が流れてきた。それぞれの思いを抱いて、この日、被災地は祈り一色に包まれた。


   「震災」と「戦争」―。この二つに通底するものを感じながら、今日、戦争終結66周年…。


身内が一緒になり、犠牲者の霊に祈りを捧げた=大槌町の江岸寺で
身内が一緒になり、犠牲者の霊に祈りを捧げた=大槌町の江岸寺で
破壊された梵鐘やお地蔵さんの姿が津波の威力を伝えている=大槌町の江岸寺で
破壊された梵鐘やお地蔵さんの姿が津波の威力を伝えている=大槌町の江岸寺で

ゆいっこ
ゆいっこネットワークは民間有志による復興支援団体です。被災地の方を受け入れる内陸部の後方支援グループとして、救援物資提供やボランティア団体のコーディネート、内陸避難者の方のフォロー、被災地でのボランティア活動、復興会議の支援など、行政を補完する役割を担っております。
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