軽自動車の普及率が2世帯に1台を初めて超え、地方を中心に軽人気が高まっていることが、全国軽自動車協会連合会(全軽自協)の調査でわかった。
全軽自協によると、2011年3月末 の全国100世帯当たりの軽の保有台数は50.6台で、前年の49.9台から0.7台増え、1986年の調査開始以来、初めて2世帯に1台を超えた。
リッタークラス小型車に燃費で劣るケースが目立つ
都道府県別で、最も普及しているのは鳥取県の100世帯当たり98.0台で、26年連続の首位。ほぼ全世帯に1台の 割合だった。ついで佐賀、島根、長野、山形県と上位の常連メンバーが続き、最下位は東京都の11.0台。東京に次いで少なかったのは神奈川、大阪、埼玉、千葉の各府県で、 地方で軽が「生活の足」として普及している実態が浮き彫りになった。事実、地方の3世代 家族で軽はセカンドカー、サードカーとして使われるケースも多い。
世帯別の普及台数だけでなく、軽自動車の保有台数自体も2707万3579台となり、前年比で1.6%増加し、35年連続で伸びた。登録車(排気量660cc以上)に軽を合わせた自家用車の1世帯当たりの普及率は、最新データの2010年3月末で1.08台と4年連続で減少しており、軽の健闘ぶりが目立つ。
排気量とサイズが日本独自の規格に制限される代わりに、税制面や有料道路の料金などが優遇される軽は、海外にライバルが存在せず、排気量とサイズを拡大しながらガラパゴス的な発展を続けてきた。かつては1000ccクラスの小型車と比べても、燃費が良いのが軽のメリットだったが、近年は衝突安全性確保のために軽の車重が増加。660ccのエンジンでは効率が悪く、リッタークラスの小型車に燃費で劣るケースが目立つなど、軽が克服すべきハードルのひとつは皮肉にも燃費になりつつある。
簡単にはハイブリッド にできないジレンマ
小型車がホンダフィットのようにハイブリッドカーとなっても、軽は車重とコストがネックとなり、簡単にはハイブリッド にできないジレンマがある。ダイハツが9月に 発売予定の新型モデルはガソリンエンジンで1リッ ター当たり30キロ走るハイブリッドカー並みの低燃費がセールスポイントだが、単純な燃費競争ではトヨタプリウスにはかなわない。このため軽は将来的にはハイブリッドを飛び越え、一気に電気自動車(EV)に進化するとみられているが、コストがネックとなる。
足元では販売好調な軽だが、日本国内は人口減で自動車全体の市場が縮小。基本的に輸出で稼ぐことができない国内専用モデルの軽は、日本メーカーにとって収益性が低く、自社開発の魅力が薄れているのは事実だ。このためマツダが自社開発から撤退して久しく、 富士重工業も2012年2月で 自社開発車の生産を中止。スバルブランドの軽はすべてダイハツからのOEM(相 手先ブランドによる生産)となる。
軽の自社開発が重荷となっていた三菱自動車は日産自動車と軽を共同開発するなど、日本メーカーは軽の自社開発を見直し、合理化を進めている。かつて国内で6メーカーが自社開発でしのぎを削っていた軽は、ダイハツ工業、スズキの2強がシェア7割を占めるようになった。経済合理性はともかく、ユーザーにとってはさみしい時代となりつつある。