電力会社の社債である「電力債」発行の期待が高まっている。東京電力福島第1原発事故以降、原発を持たない沖縄電力を除いて中断しているが、そろそろ東電以外は再開されるのではないかとも見られている。世界同時株安に見舞われる金融市場の中でも、国内社債市場は 平静さを保っており、安定した投資先の動向が注目されている。
日本の社債市場では、米国のように「ジャンクボン ド」と呼ばれる信用度の低い債券の流通量は多くない。半面、「郵便貯金」のようにほぼ確実に「利子」をもらえる印象もある電力債が^重宝されてきた。
社債市場で電力債は23%占める
実際、2011年6月末現在で約63兆円の残高がある社債市場のうち、日本原子力発電やJパワーを含めた電力債は14.5兆円で23%を占める。銀行・証券債が15.1兆円で24%。電力債の割合は震災前に25%を超えていたが、償還期を迎えるものがある一方で新たに発行されないため、総量が徐々に減っており、銀行・証券よりやや小さくなった。とはいえ、依然として4分の1近くを占める大きな存在には違いない。特に、東電債の存在感は大きく、1社で全体の7.3%に達する。
震災後、6月初めにいったんは関西電力や九州電力が主幹事証券会社を指名し、発行再開を探る動きがあった。福島第1原発の廃炉費用に加え、原発事故の賠償負担が重くのししかかる東電は、格付け会社から「投機的」等級に格下げもされており、とても値段がつかず発行は困難だ。しかし、東電の賠償負担に多少協力したとしても関西財界の大御所で、信用力の高い関電なら大丈夫だろう、との見方もあった。