岐阜県が節電のための年休を「シエスタ休暇」と名付けて奨励したのに対し、職員労組が反発してこの名称を使わないよう求めている。「昼寝ができるヒマな職場」と誤解され、イメージが悪いというのだ。
中部電力浜岡原発の停止に伴い、シエスタ休暇の試みは、節電対策の1つとして岐阜県が2011年7月から始めた。
「『昼寝ができて、楽』と言われる」
電力使用量がピークになる午後1~3時まで、年休制度を利用して時間休を取ってもらおうとする試みだ。自宅が遠い職員などは、午後からの半休も認める。岐阜県の担当課によると、7月1~14日まで職員の5分の1に当たる約800人が利用したといい、9月まで続ける予定。
この試みは、海外でも注目され、仏フィガロ紙が1面で「日本は原子力には頼れないが、代わりに睡眠力がある」と持ち上げたほどだ。
ところが、職員労組の岐阜県職連合が、シエスタ休暇の名称に反発。8月15日に、この名称を使わないよう担当課に要望する事態になった。書記次長は、こう言う。
「知り合いから『県職員は昼寝ができて、楽でいいわね』とバカにされたと、職員から聞きました。この名称は、職員がさぼっているようでイメージが悪いと考え、使わないよう要望を出しました」
こうした主張について、ネット上では、シエスタの習慣があるスペインに失礼なのではないか、との声が出ている。また、何か後ろめたいことがあるから気にしているのではないか、とうがった見方もあるようだ。
駐日スペイン大使館の広報室では、外交官が夏休み中なのでコメントできないとしながらも、シエスタについて、こう説明する。
岐阜県「昼寝が前提ではない」
「シエスタとはもともと、ご飯を食べた後に、15~20分のあいだソファにそのまま横になって目をつむって休むことを意味しました。食べたものの消化も進みますし、脳が目覚めますので、健康にはいいんですよ」
一般には、横になって休む時間を含め、長い昼休みを取ることがシエスタと呼ばれているようだ。
岐阜県の担当課でも、「昼寝が前提ではなく、長い昼休みということでネーミングしました。仕事に支障がないよう、タイミングを見て取ってもらっています」と理解を求める。県職連合の申し入れ内容は分かっているものの、シエスタ休暇の名称を使わない考えは今のところないという。
これに対し、県職連合では、「シエスタそのものを否定しているわけではありません。あくまでも、仕事中に昼寝ができるヒマな職場という誤解を招いていると言っているだけです」(書記次長)と説明している。
ちなみに、シエスタ休暇による節電効果についても、見方が分かれているようだ。
県の担当課では、「休暇中に電気を使わないよう公共の場所にいることなどを心がけてもらっており、時間帯を意識する効果があるはず」と言う。その一方、県職連合の書記次長は、「職場のパソコン1台を使わなくなるだけ。明かりや冷房も変わらないので、それほど大きな効果がないのでは」と疑問視している。