「作品を読ませていただきました。良い作品ですね。インターネットや新聞に掲載したいのですが」
個人が趣味で取り組んでいる短歌や俳句、絵画などを褒めて、ホームページへの掲載や新聞折り込みの話を無料と偽って勧誘、後から料金の支払いを強要する悪徳商法が横行している。「褒め上げ商法」というそうだ。
400人から2億円を振り込ませた
消費者庁は2011年8月9日、東京都立川市の5社に対し特定商取引法違反として、9か月の業務停止命令を出した。消費者庁によると、5社の契約者はこれまでで約400人、その多くは高齢者(平均年齢は75歳)だ。指定口座に振り込まれていた金額は、およそ2億円に及ぶという。
2010年7月末、A氏は「先生の作品をぜひ当社のHPに掲載させて欲しい。原稿料は出せませんが、掲載料は無料です」という電話を受けて依頼を承諾。後日、契約承諾書にサインして返送すると、「広告掲載料金6万3000円」と記載された請求書が送られてきた。
A氏は驚き、「こんな契約は承認していない」と電話で抗議したが、担当者は「そんなこと言っても契約されたんですからお金を払うのは当たり前です」の一点張り。
2010年9月に同様の電話を受けたB氏は、1か月後に37万8000円を請求された。問い合わせると「ネット掲載はただですが、新聞掲載は有料ですよ」といわれた。そもそも新聞掲載の説明は受けていない。支払いを断り続けたものの、度重なる催促に負け、およそ3分の1の額を支払った。するとその後、残金を払えと週1回のペースで請求書が送られ続けた。
両氏にはこのころ、別の会社からも同様の手口で勧誘が来た。それもそのはず、停止命令を受けた5社はいずれも立川市内の同じ事務所にあり、「顧客」情報を共有していたのだ。相互にタイミングを謀りつつ「チームワーク」を発揮しながら勧誘していた。
顧客情報は図書館などに置かれた高齢者のサークル誌や、自費出版で刊行された句集や歌集などをもとに収集していたようだ。最初の勧誘電話で「国会図書館であなたの歌集を拝見しました」などと自尊心をくすぐり、「愛と思いやりのキャンペーン」「平和を祈るホームページに掲載します」と言って警戒心を解く手口も共通している。