終戦の日がめぐってくるたびに取りざたされるのが、閣僚の、いわゆる「歴史認識」だ。特に靖国神社に対する姿勢が、中国や韓国を刺激することも多い。そんな中、民主党の次期代表選への出馬を表明している野田佳彦財務相が2011年8月15日、「A級戦犯は戦争犯罪人ではない」とする見解を改めて表明し、波紋が広がっている。さっそく、韓国マスコミからは「軍国主義的」などと批判的な声もあがっている。
主意書では小泉首相の認識を批判
野田氏が自身の靖国神社への立場を公に披露したのは、05年10月に提出した「『戦犯』に対する認識と内閣総理大臣の靖国神社参拝に関する質問主意書」。主意書では、小泉純一郎首相(当時)が靖国神社に参拝した際に、「A級戦犯」を「戦争犯罪人」だとの認識を示したことについて、
「小泉総理が『A級戦犯』を戦争犯罪人と認めるかぎり、総理の靖国神社参拝の目的が平和の希求であったとしても、戦争犯罪人が合祀されている靖国神社への参拝自体を軍国主義の美化とみなす論理を反駁はできない」
と、小泉氏の論理展開では他国からの批判の余地が残ってしまうことを指摘。その上で、サンフランシスコ平和条約や国会決議でA・B・C級ともに戦犯の名誉は法的に回復されていると主張。
「『A級戦犯』と呼ばれた人たちは戦争犯罪人ではないのであって、戦争犯罪人が合祀されていることを理由に内閣総理大臣の靖国神社参拝に反対する論理はすでに破綻していると解釈できる」
と、首相の靖国参拝に問題はないとの考えを打ち出した。
とくに、A級戦犯として有罪判決を受けた人の何人かは刑期途中で赦免・釈放され、名誉が回復された結果としてのちに入閣を果たしたことを重視。彼らの名誉が回復されているとすれば、同じ「A級戦犯」として死刑判決を受け絞首刑となった東條英機元首相以下7名らもまた名誉を回復しているはずとし、
「仮にそうではなく、名誉が回復されていないとするならば、日本国は犯罪人を大臣に任命し、また勲章を与えたということになるが、政府はこれをいかに解釈するか」
と、政府の見解をただしてもいる。
これに対し、小泉首相による答弁書は、
「お尋ねの『名誉』及び『回復』の内容が必ずしも明らかではなく、一概にお答えすることは困難である」
と前置きしつつ、名誉回復した人は連合国最高司令部による恩典や平和条約による刑の赦免に関する法律などで仮出所、刑の軽減が行われたが、死刑判決を受け絞首刑になった7人らは「いずれの制度の手続きもとられていない」などと違いを指摘、「我が国としては平和条約十一条により、極東国際軍事裁判所の裁判を受諾している」「同裁判について異議を述べる立場にない」と政府の立場を淡々と説明している。