朝日新聞でかでかと「おわび」 看板「ひと欄」で「偽医師」紹介

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   朝日新聞が同社の看板ともいえる「ひと」欄に関し、でかでかと「おわび」を載せた。「医師資格なし」で医療行為をしていた人物を「医者だ」と紹介していたというのだ。

   問題のインタビュー記事は、2011年8月10日付朝刊の「ひと」欄に載った「被災地で『ボランティアの専属医』を務める 米田きよしさん(42)」だ。「本来はカナダにある大学病院に所属する小児救命救急医」だと紹介し、東日本大震災の被災地、宮城県石巻市で、ボランティア活動にあたる人たちをボランティアで診察している、と持ち上げている。

「日本の医師資格は持っていないと判断しました」

朝日新聞が「おわび」を掲載。
朝日新聞が「おわび」を掲載。

   しかし、8月12日付朝刊(東京最終版)の第2社会面で、「米田きよし」を名乗る人物が、「日本の医師資格を持たずに医療行為をしてきたことが(略)わかった」と報じ、さらにその記事のそばに、4段の箱組というかなり異例の大きさの「おわび」も掲載した。

   おわび記事によると、「米田」氏への取材は、5月以降複数回、面談と電話で行った。「米田」氏は「日本の医師免許を持っている」と説明していた。

   しかし、社外から「米田氏は医師ではない」との情報があり、確認取材の結果、「日本の医師資格は持っていないと判断しました」。記事全文を削除する、としている。東京本社報道局長コメントも載っている。

   「わかった」記事とおわび記事との両方で、「日本の医師資格は持っていない」との判断にいたる取材の経緯を長々と書いている。

   ちなみに、厚生労働省サイトにある「医師等資格確認検索」を使うと、医師法で義務付けられている届け出をしている医師の名前が出てくる。「米田きよし」で検索すると、該当者はいなかった。

   もっとも、義務である2年に1度の届けを怠る医師免許証保持者もいるかもしれない。その際は、厚労省医事課の試験免許室に該当人物の「名前と生年月日」を告げれば、その人物が医師免許証の保持者かどうかの情報を一般の人でも教えてもらえる。

カナダの病院「一度も働いたことはない」

   ところで、最初の「ひと」欄記事を読む限りでは、「米田」氏はカナダで活動中の医者となっており、日本での医師資格の有無の話は出てこない。検証記事では、本人は「米国で医師免許を取得した」とも主張している。

   「日本の医師資格を持っている」との説明がウソのようなので、ほかの話も怪しいが、仮に米国かカナダの医師資格を持っていた場合はどうなるのか。

   本来は、外国での医師資格をもっていても、日本国内では医療行為はできない。日本の医師資格を得る必要がある。しかし、大震災を受け、厚労省は3月14日、外国の医師資格保有者の被災地医療について、状況によっては例外的に「違法性が阻却され得る」と認める「事務連絡」を東北の被災3県に送っている。

   仮に「米田」氏が外国の医師資格を持っていた場合、上記の厚労省事務連絡にある例外規定に当てはまって問題なしとなる可能性もある。朝日の検証・おわび記事では、「米田」氏の米国かカナダでの医師資格の有無については直接的には触れられていない。

   もっとも、朝日検証記事によると、「米田」氏が「所属している」と話し、名刺も持っていたカナダの病院に確認すると、「この名前の医師は一度も働いたことはない」との回答だった。「海外の医師資格」の方も疑がわしい、と朝日新聞はみているようだ。

ボランティア団体として助成金100万円受ける

   「米田」氏が代表を務めるボランティア団体「WF(ワールドフュージョン)」は、日本財団による「被災地支援活動への助成金」を6月末に100万円受けている。

   日本財団は、WFによる申請を受け、現地でも聞き取り調査を行い、同団体の複数人が医療ボランティアなどを実施していることを確認した。医師資格については、書類申請上の表記と本人の話を信じた形だが、「確認が甘いと言われるかもしれないが、迅速に支援を行うことを重視していましたので…」と説明した。今後、返却を求めるかどうかを検討する。8月12日昼現在、「米田」氏とは連絡がつかないそうだ。

   宮城県警は、医師法違反(無資格医業)の疑いもあるとみて捜査を始めた。

   最初の「ひと」欄で使われている「米田」氏の写真はマスク姿だ。右手にゴム手袋らしきものをはめ、ハンチング帽をかぶっている。マスク姿が医者っぽくみえるような気もする反面、せっかく朝日新聞の名物欄に登場する割には顔の露出を抑えようとしているように見えなくもない。

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