「週刊少年ジャンプ」で連載中の人気マンガ「銀魂」が、下書きのような状態で掲載されている、と騒動になっている。
全19ページのうち、鉛筆で描いたラフ画のようなもののほかに、ベタが塗られていない、スクリーントーンが張られていないなど、約半数が制作途中といった描画だ。ネットでは「読者に対し失礼極まりない!」などといった批判も出ていて、いったいなぜこんなことになってしまったのか。
19枚原稿のうち半分が未完成のマンガだった
「銀魂」は2003年から連載がスタートしたドタバタギャグマンガ。江戸時代末期に異星人から侵略を受け「開国」をした日本が舞台だ。主人公は侍魂を持った坂田銀時で、時に熱血、時におちゃらけたドラマが進行する。アニメ化、映画化もされ熱狂的なファンも多い。
問題のマンガが掲載されたのは「週刊少年ジャンプ」の2011年35、36合併号。主人公の銀時達がホストクラブのホストになり、「マダム」を持てなすといいった内容で、いつも通りのドタバタコメディーが展開する。今回は19ページあり、扉の1ページ目は従来通りのタッチ。しかし、2ページ目に移ると、ラフな線が現れ、ベタが不十分で、スクリーントーンも張られていない「下書き」のような絵が出てくる。そして5ページ、6ページは普通のタッチに戻るが、7ページ以降はまた粗い絵となる。これが繰り返され、19ページの約半分が、制作途中とはっきりわかる描画になっている。
ネットの掲示板やブログには
「読者に対し失礼極まりない!リコールの対象にすべき 」
「手抜きで金もらえるならそうするわなw」
「あんな状態で掲載して、普段通りに金をとる編集と、出版社の方が問題だ」
などといった批判が多数出た。
なぜこのようなマンガを掲載することになったのか。集英社に問い合わせてみたところ同社広報は、担当者と連絡が取りにくい時期のため、回答には少し時間がかかる、ということだった。
完成原稿が届くのを編集者はずっと待っていた?
マンガ雑誌も出している総合出版社の編集長は今回の「事件」をこう推理する。
まず、考えられるのは、編集者か印刷工場の手違いで未完成のマンガを印刷してしまったケース。ただ、今回の場合は違うのではないか、と見る。掲載されたマンガの半分は完成しており、
「おそらく、完成したページから印刷の準備を進めていて、残りの原稿の完成を待っていたのでしょう」
という。
通常、連載漫画の原稿が印刷に間に合わない場合は、別にストックしているマンガに差し替えて、掲載から「落とす」のが通常だ。今回の場合は締め切り時間に間に合うと編集部は踏んでいた。そして、完成したページから印刷の準備を始めてしまった。
ひょっとすると、事前に「あて馬」として未完成のものも入れて待っていたかもしれない。
結果的に、待っていた原稿は印刷工場に来なかった。白紙で出すわけにはいかないため、未完成のものをやむをえず掲載することになったのだろう、と言うのだ。
「週刊マンガ雑誌のばあい、こうした綱渡り的な作業は日常茶飯事。ただし下書きに見える未完成品を掲載するのは読者に対する裏切りで、むしろ落とした方が読者は納得すると思うのですが」
こう総合出版社の編集長は推理している。