消費税、法人税が取引材料に
そのいい例は、消費税だ。今は5%であるので、軽減税率はない。ところが、10%になれば、軽減税率かゼロ税率の話が必ず出てくる。そして、特定業界は軽減税率かゼロ税率が認められる。
例えば、新聞は紙面上では消費税率引き上げに賛成であるが、一方で新聞社には軽減税率が認められることは財務省との間で暗黙の了解になっているという噂だ。また、経団連も消費税率引き上げに賛成であるが、法人税率の引き下げをバーター条件にしている。財務省も税率引き上げの一方で、軽減税率などを認めることが権限拡大になるので、ハッピーなのだ。
デフレも円高も同じ現象だ。円とドルとの相対量で円のほうが過小でドルのほうが過大であれば、ドルの希少価値が低くなってドル安・円高になる。また、円とモノとの相対量で円のほうが過小でモノのほうが過大であれば、モノの希少価値が低くなってデフレになるからだ。
要するに、増税対非増税は、「増税・デフレ・円高」対「非増税・脱デフレ・円安」の争いだ。増税・デフレ・円高でメリットを受ける人は、官僚、規制業者など既得権者が多い。増税論者は、増税を言わない人に対し、イヤなことから逃げているというが、むしろ逆で、モノをいわない人に押しつけ、既得権者との闘いから逃げている。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」、「日本は財政危機ではない!」、「恐慌は日本の大チャンス」(いずれも講談社)など。