2011年8月8日に72年ぶりに復活したコメ先物取引は、東京穀物商品取引所(東穀取)で上場2日目となる9日にようやく1万7280円の初値が付いたが、その直後にサーキットブレーカー(一時的な取引停止措置)が働いて再び取引が中断するなど混乱のなかで始まった。
もう一方の大阪商品取引所(関西商取)は8日、北陸産コシヒカリの11月物が1俵(60キログラム)あたり1万4320円。12月物が1万4540円、12年1月物が1万9210円の初値を付けて取引が始まり、12年1月物は一時ストップ高となった。
72年ぶりの「復活」で注目度高まる
東穀取のコメ先物は8月9日午前に、関東産コシヒカリの取引で2012年1月に引き渡し期限を迎える1月物の初値が1俵あたり1万7280円を付けて約定した。期近の11年11月物と12月物は、ともに1万7400円の初値を付けた。
前日の取引開始直後から買い注文が殺到。取引開始時の目安となる基準値(1万3500円)を大きく上回り、値幅制限を超える水準が続いたことでサーキットブレーカーが断続的に発動されて、結局初日には値段が付かないまま取引を終える展開に。そのため、9日は取引の開始値を1万6400円に引き上げてスタート。初値が付いたが、その直後に再びサーキットブレーカーが発動されて取引が中断するなど、混乱した。
東穀取によると、そんな市場に参加していた多くが個人投資家だったという。「72年ぶりのコメ先物ということで注目度が高かったこともあって殺到しました。(当初参加者として見込んでいた)卸売業者などはむしろ、(価格が)どの程度の水準に落ち着くのかわからず、初値が付くまでは様子見を決め込んでいたようです」と説明する。
コメ先物は、たとえばコメ農家が作付け前にコメの販売価格を確定し、収穫時に実際の価格が下落した場合でも損失を回避できる利点があることから、コメ農家や卸売業者などの参加が見込まれていた。
過熱ぎみだった市場もだいぶ落ち着き、9日午後には1万6000円台で推移。東穀取は「コメ農家や卸売業者らの参加は、これからでしょう」と期待する。
原発事故の影響で「供給減」を予想
個人投資家から「買い」注文が殺到した背景には、東日本大震災と東京電力の福島原発の事故の影響、さらには7月に米どころの新潟・福島を襲った集中豪雨によって、コメの供給量が減るとの思惑が働いたためとみられる。
ここ最近のコメ価格は、現物市場で昨年収穫された「22年産米」が急騰している。これから出回る新米(23年産米)が、福島原発の事故の影響で販売が懸念されているためだが、コメ先物の相場にもそれが反映されている。
国がコメの放射性物質に対する検査に乗り出していて、すでに千葉産や茨城産などの調査を進めている。近く結果が明らかにされる予定だ。そういった中で、「将来こうした地域のコメが売れなくなると予想。反対に、汚染の心配の少ないブランドの新米を先物買いする動きが活発化して高値を呼んだのではないか」(東穀取)とみている。