2011年春に大学や高校などを卒業した学生の採用内定取り消しが176社・556人にのぼったことが厚生労働省の調べでわかった。このうち126社・427人が、東日本大震災が原因という。
内定を取り消された人の内訳は、大学生・短大生が244人、高校生312人で、調査を開始した1993年度以降ではリーマン・ショック後の2008年度の2143人、アジア通貨危機があった97年度の1077人に次いで3番目に多かった。
宿泊・サービス業が37社・154人と最多
厚労省の調査は10年度に、全国のハローワークに通知があった事例を集計した。震災が原因で採用を取り消された427人のうち、6割を占める264人が東北地方の学生で、新社会人として働くはずだった。
さらにこのうちの99人が福島県、87人が岩手県、宮城県は58人の内定が取り消され、被害の大きかった3県で全体の4割を超えた。
産業別では、宿泊・サービス業が37社・154人で最多。温泉地や観光地が多い東北地方を中心に、ホテルや旅館が被災したり、震災の影響で観光客の足が遠のいたりしたことがある。製造業も33社・91人、生活関連サービス・娯楽業が15社・69人と続く。金融・保険業4社・50人、卸売・小売業も20社44人と目立つ。
また、経営内容の悪化や倒産といった震災の影響以外の理由による内定取り消しも、53社・129人いる。
厚労省は内定取り消された学生に対しては、ハローワークで就職先を紹介。大学生などの就職難が広がるなか、11年2~3月には延べ10万人が「新卒応援ハローワーク」を利用し、1万7933人が就職を決めている。
この春に内定を取り消された566人も、約半数の280人が6月末までに就職先を決めていて、若年者雇用対策課は「被災地の企業では震災直後にやむを得ず、内定を出した学生を取り消したケースも少なくありません。事業の再開にあたり、一たん取り消した学生に声をかけている企業もあると聞いています」と話している。
震災後、地元での就職志向強まる
一方、厚労省の学校基本調査速報によると、この春に大学を卒業した大学生のうち、就職も進学もしなかった人は8万7988人で、前年よりも0.9%増えたことがわかった。アルバイトなどを含めると10万7134人。全体の19.4%にのぼり、ほぼ5人にひとりが定職についていない計算になる。
学生の就活事情に詳しい石渡嶺司氏は「雇用のミスマッチは地方ほど大きい」と指摘する。とくに震災後は、学生が両親と離れて暮らすことに不安を感じたり、親も地元に就職してほしいと考える傾向が強まった。
一方で、なかでも被災地は企業がなお事業を再開できず、継続を断念するケースがあり、雇用機会そのものが減っている。「かなり厳しい状況にあります」と、石渡氏は言う。 野村総合研究所によると、被災地の雇用は3月時点で77万3000人あったが、1年後には4万4000人減少し72万9000人になると試算する。なかには転職を余儀なくされる人も出てくるので、「地元、大手にこだわりすぎると、結果的に就職先がないということになりかねない」(石渡氏)と話す。