「東洋のガラパゴス」に北米産トカゲがウヨウヨ 小笠原諸島「世界遺産」の前途多難

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島民の賛否が分かれる空港建設

   多くの島民は、世界遺産指定の取り組みを通じ、こうした保護の取り組みを当然と受け止めているが、一方で、唯一の産業ともいえる観光への期待は大きい。そこでポイントになるのが空港建設問題だ。

   島への交通手段は、東京・竹芝桟橋と父島を結ぶ大型客船「おがさわら丸」(定員約1050人)だ。年末年始などを除き、6日に1便で、片道25時間半。母島へはさらに船を乗り継いで2時間かかる。食料など住民の生活物資も、おがさわら丸だけが運ぶ。もちろん、観光客も、豪華客船がクルージングで立ち寄るなどを除くと、この船便だけ。

   地元では地域振興や医療・福祉体制への不安から空路開設を求める声も根強い。空港建設計画は、本土復帰20年の1988年に都が打ち出したが、父島に隣接する兄島の候補地で希少生物が見つかり、膨大な建設費もネックになって計画は撤回され、超高速艇計画も採算が見込めないとして頓挫。現在は、世界遺産の範囲外の父島西部・洲崎地区に残る旧軍の500メートル滑走路跡が候補とされている。

   島民の間で賛否は割れている。自然に惹かれて移住した「新住民」を中心に「自然破壊が進む」との懸念の声が聞かれる一方、観光関連、サービス業など商工関係者を中心に空港建設待望論が多い。また、島生まれの人など、医療への不安を抱える高齢者を中心に、空港に期待する住民も少なくない。

   石原慎太郎東京都知事は、「素晴らしい自然を見に行くなら飛行機で行って見てすぐ帰ってくることもない」と述べ、建設に消極的な姿勢を示す。

   自然遺産の先輩であるガラパゴスは、観光客の急増と外来種対策の遅れにより、一時は「遺産」継続も危ぶまれる事態に陥った。小笠原が、空港を作っても大丈夫と、誰もが認めるような自然との共生に向けたルールを作り、それを実践できるか。空港問題の行方は、その一点にかかっている。

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