菅直人首相の「脱原発」発言で日本の原発政策が迷走する中、日立製作所・米ゼネラルエレクトリック(GE)連合が2011年7月14日、リトアニアの原発建設の優先交渉権を獲得し た。東日本大震災後も日本の原発技術への信頼性が揺らいでいないことの証明となったが、選定の真の決め手は日立による建設計画への多額の 出資とみられている。関係者の間では「日立は原発を『売った』のではなく、『買った』」との皮肉な見方がもっぱらだ。
リトアニアのスベダス・エネルギー省次官は会見 で、日立を選定した理由について「資金面で最も有利な提案をした」と説明。同省は「資本面での関与も考慮した」との声明を出し、日立によるプロジェクトへの多額の出資が決め手になったことを示唆した。
日立・GE連合と東芝・米ウェスチングハウス連合が激しく競り合う
2020年の稼働を目指すリトアニアのビサギナス原発の受注を巡っては、日立・GE連合のほか、東芝・米ウェスチングハウス連合も名乗りを上げ、激しく競り合った。震災後、日本メーカーにとって初の海外案件とあって、受注すれば自社の原発の安全性をアピールする絶好の機会になるからだ。日立、東芝とも原発事業を拡大する戦略を堅持しているだけに、この案件を震災の逆風にさらされる原発輸出の突破口にしたい考えだった。
日立の中西宏明社長は6月中旬、リトアニアのクビリウス首相と面会し、原発建設プロジェクトへ出資する姿勢を強調した。ウェスチングハウス欧州部門のトップも6月下旬、首相に出資の意向を示し、一歩も引かない構えを見せた。