中国の高速鉄道の追突事故をめぐり、一度は激しく当局の批判を展開した中国メディアの論調が、急にトーンダウンした。中国当局が「公式発表以外は報じてはならない」などとする通達を出したことが原因とみられるが、通達文の内容がネット上に暴露されるなど、メディア側も抵抗を続けている。
事故が発生したのは2011年7月23日のことだが、翌24日には「国営新華社通信の記事のみを使うように」といった通達が出されていた。だが、この通達はほとんど効果がなく、メディアからは事故対応を批判する声が続出。26日には、国営の中央テレビ(CCTV)のアナウンサーが、原因究明を涙ながらに訴えた。
29日夜になって改めて強い内容の通達
だが、29日夜になって改めて強い内容の通達が出た模様で、メディアの論調は一気にトーンダウン。ただし、中国メディアからすれば「転んでもただでは起きない」様子で、中国版ツイッターとも言われる「博微(ウェイボ)」を中心に、報道規制の実情を明らかにする書き込みが相次いでいる。
複数の書き込みを総合すると、中国共産党からの通達の内容は、
「7月23日の特別重大交通事故をめぐっては、国内外の世論が複雑になってきている。各紙と、そのウェブサイトにおいては、事故関連の報道をクールダウンさせること。プラス面の報道と当局が発表した動向以外、いかなる報道も行わないこと。評論も行わないこと」
といったもの。
「新京報」など数紙が記事の差し替え
この通達には、各紙が従ったようで、「21世紀経済報道」紙関係者は、
「事故関連の記事を8つ掲載する予定だったが、夜になって禁止令が来たので、やむを得ず臨時の原稿に差し替えた」
と書き込んでいる。同紙以外にも「中国経営報」、「新京報」「銭江万報」「華商報」といった新聞が、記事の差し替えを余儀なくされた模様だ。
「突然記事の差し替え作業をさせられた夜勤の皆さんに敬意を表します」
という書き込みもある。
それ以外にも、「新京報」の関係者によるとみられる、
「妥協に妥協を重ねて残した4ページもボツになってしまった。悲しいが仕方ない、200人以上の従業員を食べさせなければならないのだから」
という書き込みもある。仮に通達に背いた場合、廃刊などの強い措置もあり得ることを念頭に置いている可能性もある。
一連の中国当局の強硬姿勢の背景には、日本で言う「初七日」を控え、事故を振り返る特集紙面で鉄道省や政府への批判が大々的に展開されることを警戒しているとの見方が根強い。