米債務問題を背景にした円高相場に、2011年8月1日から50倍から25倍に上限が引き下げられた証拠金倍率(レバレッジ)規制が重なったことで、外国為替証拠金取引(FX)に参加する個人投資家の思惑が入り乱れている。
東日本大震災直後の円急騰で多額の損失を出した投資家も少なくなかったとみられるが、4月以降のドル円取引量は震災前の1~2月を上回っている。相場が大きく揺れ動いて、個人投資家の投資熱は高まっている。
円安に振れるのは一時的?
FX取引は8月1日からレバレッジ規制が強化された(写真は、「くりっく365」のホームページ)
円高要因となっていた米債務の上限引き上げ問題は7月31日夜(日本時間8月1日朝)、オバマ大統領が緊急会見し、「米議会と与野党幹部は債務上限引き上げで妥協に達した」と述べ、デフォルト(債務不履行)は回避される見通しとなった。
これによって、東京外国為替市場のドル円相場は一時的に円安に振れたが、1日17時には1ドル77円52~54銭前後と、前週末の7月29日17時に比べて6銭円高ドル安に動いた。
外為どっとコム総合研究所の植野大作社長は、「(米債務の上限引き上げの合意は)おそらく(議会を)通過するのでしょうが、通過しないことにはデフォルトを回避したとはいえません」という。
その後は77円台半ばで推移しているもの、「いつ円高に振れても不思議ではない状態が続いています」と話し、円買い・ドル売り基調がなお優勢な気配にある。
植野社長によると、ポイントは債務上限の引き上げ幅と米経済情勢にあるという。「引き上げ幅が十分であれば、米経済のファンダメンタルズ次第で1ドル85円まで期待できます。しかし上げ幅が不十分だと、大統領選までに再び問題が蒸し返されます。米経済によほどの好材料が出てこなければ、さらなる金融の量的緩和が必要となって、過去最高値の1ドル76円25銭を突破する可能性もあるでしょう」とみている。