菅直人首相は2011年7月29日夜記者会見を開き、この日決定した復興基本方針と、新たなエネルギー政策の内容を力説した。だが、これらの政策を実行する前提になる首相の退陣時期については明言を避け続け、一部で指摘されている「電撃訪朝説」についても、否定しなかった。
復興基本方針は5年間に少なくとも19兆円の財政措置を講じることを柱としており、エネルギー政策では、「原発に依存しない社会を目指し、段階的に原発への依存度を下げる」ことを、「政府として進める」とした。
北朝鮮極秘接触は「承知せず」
焦点は、これらの方針を「誰が進めるか」。必然的に、菅首相の退陣時期に関する質問が相次いだ。現時点では、いわゆる「退陣3条件」のうち、再生可能エネルギー法案と特例公債法案の2法案が未成立だ。これらが成立した場合や、野党の協力がこのまま得られず今国会で成立させられなかった場合の対応を聞かれたが、菅首相は
「私の出処進退については、6月2日の代議士会、そしてその後の記者会見で申し上げてきた。その言葉については、私自身の言葉なので、責任を持ちたいと考えている」
と繰り返し、やはり退陣の時期は明らかにしなかった。
また、中井洽元拉致問題担当相が、政府職員を同行させて北朝鮮の宋日昊(ソン・イルホ)・朝日国交正常化交渉担当大使と中国・長春で極秘接触したとされる問題では、
「私はまったく承知していなかった」
と釈明。
「保安院そのものの存在が問われる」
ただし、北朝鮮との非公式接触や、首相の訪朝の必要性について問われると、
「拉致問題の解決について、私はあらゆる努力は惜しまない、あるいは、あらゆる努力はするべきだと思う」
とのみ答え、可能性を排除しなかった。
この日発覚した、原子力・安全保安院が電力会社に「やらせ」を依頼していた問題では、
「もしこれが事実だとすれば、きわめて由々しき問題であり、徹底的な事実関係の究明と、それを踏まえた厳正な対処が必要だと考えている」
「まさに保安院そのものの存在が問われる」
と強い不快感を示した。
なお、新潟県内で18万人に対して避難勧告・指示が出されている豪雨については、会見では触れられなかった。