全国的な電力不足の影響で研究機関の活動にも制約が課せられている。夏の節電対策で、大量の電力を消費するスーパーコンピューターが思うように運用できないでいる。国立環境研究所は2011年7月から全面停止、防災科学技術研究所は稼働率を70%に落とした。
東京電力管内の茨城県つくば市にある国立環境研究所は2010年夏に比べて電力使用の25%削減を打ち出した。その具体策として、スパコンを7月いっぱい全面停止した。現在、稼働に向けて準備中で、「8月2日には稼働を再開する」(環境情報部)予定だ。
世界一のスパコン「京」は自家発電を増やして稼働中
国立環境研究所では、スパコンを地球温暖化の将来シミュレーションなどに使っている。1か月間停止した影響が気になるが、「定量的な評価はむずかしいですが、停止するに際して研究員には、できるだけ影響を抑えるように研究計画を組み直したり、スパコンの利用時機をずらしたりなどで対応するようお願いし、それでなんとか遣り繰りできた」と話す。
1か月間の停止で、「おおよその状況がわかった。今のところ稼働しても大丈夫と判断した」という。
また、理化学研究所では、東日本大震災後の4月に稼働を停止していた和光キャンパスのスパコンが現在、施設全体の節電目標である1万7600キロワットを上回らないという「制約」のなかで稼働している。
世界一のスパコン「京」を置いている計算科学研究機構(神戸市)も関西電力の節電要請に対応しているが、5メガワットの出力をもつ2基のコージェネレーション・システム(CGS)を交互に動かして稼働を続けている。
計算科学研究機構は、「『京』は現在も整備、開発中で稼働を止めるわけにはいきません。そのため昨年9月に、バックアップ用に導入したCGSが役に立っています」と話している。 同研究所のように、電力消費量の多いスパコンを抱えている研究機関には「自家発電」の出力を増やして乗り切ろうとするところが少ないようだ。
稼働率の低下「影響を心配している」
防災科学技術研究所のスパコンは稼働率を70%に落とした。同研究所は主に地震災害や建物破壊のメカニズムを解析するのにスパコンを使っていて、東日本大震災のあとでもあり、研究成果が待たれるところ。スパコンは同研究所の消費電力の約40%を占めているという。 気候研究所は7月から稼働率を60%に抑えた。国立天文台や海洋研究開発機構も80%程度の稼働率を落とすなどして、節電に協力している。
文部科学省は、「スパコンの稼働は各研究機関に判断を任せています。稼働の停止や稼働率を落とすことには影響を心配していますが、節電はいまや全国的なことですから協力できることは協力してもらうしかありません」(研究振興局)と話している。