出版不況の流れが止まらない。2011年上半期の出版物販売実績をみると、対前年同期比の減少率は、2010年通期の減少率より大きくなっている。中でも雑誌は6.7%減と「過去最大の落ち込み幅」だった。書店の減少も続く。
出版科学研究所によると、2011年1~6月期の出版物販売実績は、前年同期比(以下同)で3.8%のマイナスだった。2010年の1年間をみると6年連続の減少で、09年より3.1%マイナスだった。11年上半期は、10年通期より減少率が「加速」している。
老舗雑誌の休刊も相次ぐ
11年上半期の内訳は、書籍が0.4%減、雑誌は「過去最大の落ち込み幅」の6.7%減だった。雑誌は2010年まで13年連続で減少を続けており、11年も歯止めはかかりそうにない。 日販速報(日本出版販売)によると、2011年1~6月に休刊した週刊・月刊誌は102点にのぼる。創刊誌は72点だった。
その後も雑誌休刊のニュースは続いている。11年7月21日には、情報誌「ぴあ」(首都圏版)の最終号が発売され、約40年の歴史に幕を閉じた。1972年創刊の「老舗」情報誌だった。また、7月25日には小学館が20歳前後の女性向けファッション誌「PS」を12月号で休刊すると発表した。同誌は1977年創刊の雑誌を2002年に改称したもので、やはり「老舗」誌だ。
専門書関連でも厳しい風が吹いている。丸善CHIホールディングスは7月27日、子会社で大学向け専門書販売などを行う丸善が、正社員の3割にあたる約180人の希望退職者を募集すると発表した。同ホールディングス傘下にはほかに、丸善書店やジュンク堂書店などがある。
11年上半期の出版物販売実績3.8%減と3月に起きた大震災の関係について、「出版業界唯一」の専門紙「新文化」の編集部にきいた。
全国の販売実績という観点からは、大きな震災被害が出た東北地方東部の占める割合は小さいため、大震災と直接関連付けることは難しく、むしろ数年来の全体の減少傾向が続いていると見た方が自然だという。
勿論、大震災の影響がないわけではない。被災地では、営業ができなくなる店が続出した一方で、営業を再開した書店に多くの人が訪れ、売り上げを大きく伸ばしているところがある。震災ニュース関連の書籍といった情報ものが広く求められているほか、「気晴らしとしての読書」にも関心が高まっており、「活字の良さ、強さが改めて確認された」という。
書店も減少傾向続く
一方で、東京の書店などでは売り上げが減少傾向という。節電による営業時間短縮や弱冷房の影響も考えられる。
明るい側面としては、本を原作にしたドラマや映画、アニメが増える傾向にあり、互いに相乗効果で人気を博す例もある。こうした流れが加速する兆しがあるそうだ。それでも、下半期については、売り上げの減少傾向という大きな流れは変わらないだろう、とみる。
日本書店商業組合連合会にもきいた。1986年のピーク時には約1万3000あった加盟店が、以降右肩下がりで2011年4月には約4950店にまで減り、初めて5000店を割り込んだ。大型店による販売面積は増える傾向にあるが、いわゆる「町の本屋さん」の廃業が相次いでいる形だ。
大震災の影響で今も営業を再開できない被災地の書店は、7月現在でも「八十数店」ある。
同連合会の大川哲夫専務は、書店数の減少傾向に歯止めをかける特効薬はないとしながらも、「(書店が)挑戦する姿勢が大切だ」と指摘した。
例えば、出版社による電子書籍への取り組みに対して、書店の店頭で電子書籍端末を販売することで、書店側にロイヤリティのような形でお金が流れる仕組みをつくることができないか、などの検討を進めているという。