故郷の偉人を、NHK大河ドラマの主人公に――こうした運動は全国各地で行われているが、中でも熱心なのは長野県伊那市、福島県会津若松市、猪苗代町などが進める「名君保科正之公の大河ドラマをつくる会」だ。
保科正之は会津藩(現在の福島県西部)の初代藩主。実の兄である将軍・徳川家光、後を継いだ家綱を支え、幕府の首脳として政治の安定に貢献した人物だ。「つくる会」では7年にわたり「大河」起用を目指して運動を続けており、集めた署名は45万人を突破。2011年7月27日には実に10度目となるNHKへの要請を行った。
渡部恒三氏らが「応援する国会議員の会」
この日、NHK本社を「つくる会」会長を務める白鳥孝・伊那市長、副会長の菅家一郎・会津若松市長、前後公・猪苗代町長らが訪問。改めて正之を主人公とした大河ドラマの早期実現を求めた。「つくる会」によればNHK側も「すぐにというわけにはいかない」としつつ、45万人を超える署名を高く評価していたという。
「つくる会」は2004年、正之が幼少期から19年間を過ごした長野県高遠町(現・伊那市)で組織された。現在は伊那市観光協会内に事務局を置き、正之が後半生を送った会津若松市、猪苗代町などと協力し、「大河」実現に向け署名活動などを続けている。
2009年には地元議員による「名君保科正之公の大河ドラマ実現を応援する国会議員の会」も結成。会津出身の渡部恒三・民主党最高顧問が会長に就き、羽田孜・元首相、与謝野馨・現経済財政担当相などが発起人に名を連ねた。
すでに再来年は会津の新島八重
「つくる会」事務局によれば、
「正之は1657年に江戸の大半を焼いた『明暦の大火(振袖火事)』の際、幕府首脳として街の復興に手腕を発揮しました。東日本大震災後のこの苦しい世相に、正之の生涯はよく合うのでは」
という。
正之の墓所がある猪苗代町で顕彰活動を行う「猪苗代の偉人を考える会」副会長の小桧山六郎さんは、
「正之は常に庶民目線で物を考え、先手先手を打った政策で、江戸幕府300年の礎を築いた。豊かな会津藩を作り上げた名君として、今でも地元には慕う人が多い。ぜひ今の政治家たちにも、正之の姿を見習ってほしい」
と話す。
NHKは2011年6月、被災地応援の意味も込め、2013年の「大河」主人公を会津出身の新島八重(同志社の創立者新島襄の妻)に決定している。地元では、その会津の「藩祖」である正之にも同様の期待がかかるわけだが、立て続けに会津というのが可能かどうか。
NHKには正之を含め、「人物でいうと30名くらい」の大河ドラマ化要望が寄せられているといい、競争率は高い。今回の「つくる会」からの要望についても、「企画の一つとして、今後検討させていただきます」とのことだった。