全国都道府県議会議長会が、「菅総理の退陣を求める緊急決議」を賛成多数で採決した。議長会事務局によると、同会が総理退陣要求決議を出すのは初めて。まさに異常事態だ。東日本大震災の被災地のうち、一部の県の議長に怒りの声を聞いてみた。
退陣要求決議が採択されたのは、2011年7月27日の定例総会だ。前例がないことから慎重論も出たが、最終的に賛成が多数を占めた。被災地の岩手、宮城、福島の3県議長が共同で提案したものだ。
菅首相は「復旧・復興の足かせ」
決議文には厳しい文言が並んでいる。
「大震災の復旧・復興に向けての明確なビジョンの提示もないスピード感に欠けた対応や、原子力発電所の再稼働のあり方に関する場当たり的な対応」について、「国民の政治に対する信頼を著しく損ない」「被災地域の住民の意欲を失わせる」と批判している。
さらに、「(菅首相が)退任の意向を表明したのにもかかわらず、未だその時期を明確にせず」「復旧・復興の足かせになっているというような風評が出ている」事態になっていることについて遺憾だとしている。
菅首相の存在が「復旧・復興の足かせ」になっている、というのを「そういう風評もある」という形でにごしてはいるが、議長会内にも「菅首相が足かせ」という認識が広がっていることを伺わす文案だ。
各都道府県の議長は自民党所属議員が多いことを考慮に入れたとしても、初の退陣要求決議が議長会から出たことの意味は小さくなさそうだ。
福島県の佐藤憲保議長に7月28日に話をきくと、大震災以来の菅政権の対応について、「本当に国民の、住民の命を守る、という姿勢が感じられないままだった」と指摘した。特に菅首相が「退陣表明」した6月以降は、政治の動きが菅首相の進退や政局中心となってしまっており、菅首相の存在はもはや「復旧・復興対応が進まない原因」にみえる。
「一刻も早く国全体でことに当たることができるようにしてほしい」と改めて菅首相に早期退陣を求めた。
民主党内すらまとまらない現状に苛立ち
宮城県の畠山和純議長も7月28日、「政治は本来、夢や希望を与えるものだが、今の内閣は絶望内閣ですね」と話した。復興対策で様々な要望を国にしてきたが「答えがなかなか返ってこない」。
議長会という立場で国政の政局に関わることについては、これまでは「政治的空白を生むことにつながっては良くない」と慎重に構えていた。しかし、「菅政権の継続自体が政治的空白だ」との思いが他県にも広がっていることが分かり、今回の退陣要求の共同提案につながったそうだ。
被災者の要望に迅速に対応するには、地方自治体だけでは限界がある。国を挙げた対応を望んでいるが、「民主党の党内すらまとまっていない現状」には苛立ちやあせりを感じているようだ。
菅首相の退陣を求める声は、中央・地方政界だけではない。日本経団連の米倉弘昌会長が何度も菅首相を酷評しているほか、民主党にとっては「身内」のはずの労働組合、連合の古賀伸明会長も7月28日、広島市内の会見で「菅首相には政治空白を積み上げることをすぐにでもやめてほしい」と改めて早期退陣を求めた。
また、阪神大震災(1995年)発生時に首相(旧社会党所属)だった、村山富市氏も7月26日、共同通信の取材に「辞めると言ったら早く辞めるべきだ。辞める人の言うことを聞く人は誰もいない」「閣内の不統一も目立ち、政権としての体をなしていない」と批判を展開している。