バラエティ番組も真っ青になるほどの「本音トーク」が国会で繰り広げられた。菅直人首相主導による「電力需給情報の全面開示」要求について、海江田万里・経済産業相が「悔しいですよ」「信用されてないんだなと思いましたね」などの答弁を連発したのだ。
「内閣不一致、閣内不信、といわれても仕方ない」。原発・電力対策に関する菅首相と海江田経産相の数々の行き違いについて、2011年7月27日の衆院経済産業委員会で、公明党の稲津久議員はこう批判し、海江田氏の見解を求めた。
「私がこれまでやってきたことはほとんどが無駄だな、と」
内閣不一致といえば、本来は「大臣のクビ」が飛び兼ねない「由々しき」問題のはずだ。しかし、海江田氏は開き直ったのか、よほど腹に据えかねているのか、「内閣不一致」を隠そうとするどころか、赤裸々に不一致ぶりを語り出した。
内閣府の国家戦略室から、「経産大臣は持っている電力需給情報について公表すべき」と「冒頭に」書いてある文書が届いた、と説明した海江田氏は、ときおり下に目を落としつつ、小刻みにうなずきながらこう続けた。
「これはねえ、やっぱり、私はこれまで全部、全て(情報を)開示してきましたよ、これは」
真っ向から「文書」に反論する内容だ。さらに、
「悔しいですよ、はっきり言って」「信用されてないんだなと思いましたね」
と続けた。「文書をどなたが出したのか知らないが」と断りつつ、念頭には菅首相を思い描いているようだ。
「(文書が)失礼とまでは言いませんがね」「こういう文書を出したとき、受け取った人の気持ちを考えないといけないな、と」とも話しており、相当「失礼だ」と感じている様子だ。
話しているうちに怒りがこみ上げてきたのか、話し方はだんだん吐き捨てるような調子になってきた。
「私がこれまでやってきたことはほとんどが無駄だな、と思いましたよ。本当のこと言いましてね」
海江田氏の恨み節の迫力に押されてか、質問した稲津議員も「気持ちを含めよく分かりました」と引き取るなど、むしろ海江田氏に同情的にすら見えた。
海江田氏は手に「忍」の字
「菅VS海江田」の構図は、今回の電力需給情報開示だけでなく、「海江田氏による原発安全宣言直後に菅首相主導でストレステスト導入」でも浮き彫りになっていた。また、菅首相の「脱原発依存」発言をめぐっては、海江田氏が「個人としての発言なので『鴻毛より軽い』」と斬って捨てた。
海江田氏は、7月21日には左手のひらに「忍」の字をかいて参院予算委に臨むなど、菅首相の「頭越し」の決定による「メンツつぶし」に耐える姿勢を示している。
今思えば、5月に菅首相が国際会議で太陽光パネル1000万戸計画をぶち上げた直後、海江田氏が「沈黙の7秒後に『聞いてない』」と会見で明かしたことなど大した「内閣不一致」ではなかったのかもしれない。その後の両者のねじれぶりを見せつけられた後となってはかわいいものだ。
海江田氏は、原子力損害賠償支援機構法案と再生エネルギー法案が可決・成立した段階での辞任を示唆している。再生エネルギー法成立は、菅首相が示す退陣3条件のうち、残る2条件のひとつでもある。
菅首相の退陣については、「3条件成立後も辞めないのではないか」との見方も根強いが、海江田氏の近々辞任の方は「ほぼ確実」と見られている。菅首相は海江田氏について「更迭などは全く考えていない」(7月21日)としている。