さいたま市に、「野良クジャク」が出現した。地元紙が報じたもので、悠然と路上を歩く、一羽のクジャクの写真が掲載されている。
その美しい羽で人気のクジャクだが、鹿児島・沖縄の両県では捨てられた個体が野生化、生態系に悪影響を与えている。さらに調べると、本州や四国など各地で「野良クジャク」の目撃証言が飛び出した。
福島や静岡、三重、小豆島でも目撃
今回目撃されたのはクジャクの一種、インドクジャクのメスと見られる。本来の生息地はパキスタン、インド、スリランカ、ネパール、バングラデシュ。オスでは飾り羽を含めた全長が230センチ(うち飾り羽が160センチ)で、空を飛べる鳥としては最大の部類だ。日本では普通、動物園などでもない限りお目にかかれない。
7月26日付の埼玉新聞によると、クジャクが見つかったのはさいたま市北区。人間を恐れない様子から元々は誰かに飼われていたと考えられるが、警察には飼い主などからの遺失届などは出ていないという。
さいたま市、および隣接する上尾市では1年以上前から、クジャクの目撃証言が相次いでいた。
YouTubeには上尾市で昨年4月に撮影された、民家の屋根に現れたクジャクを捉えた映像が投稿されている。映像製作会社「manwomanfilm」のスタッフが偶然撮影したもので、騒然とする住民をよそに、クジャクが大きな羽を広げて飛び去るまでを収録する。こちらの映像のクジャクはオスのようで、さいたま市で目撃されたものとは別個体らしい。
埼玉県だけではない。ツイッターでは各地の、
「道に迷ったら野生のクジャクが出てきた!!」
「会社の駐車場にクジャクいた」
「野生のクジャクがいた」
といった驚きのつぶやきを見つけることができる。その目撃地域は福島から静岡、三重、小豆島などにも及び、「野良クジャク」はまさに全国津々浦々に出没している。
クジャクを飼うのはそう難しくない
国立環境研究所によると、現在日本でインドクジャクの定着が確認されているのは、沖縄県の先島諸島と、鹿児島県の大隈諸島。1960年代以降、業者などが持ち込んだものが野生化、繁殖したと見られ、エサとなる昆虫が減少する、他の小鳥がエサを奪われるなどの問題が起こっている。
それ以外の地域については現在のところ野生化の報告は入っておらず、同生物・生態系環境研究センター主席研究員の五箇公一氏も、各地の目撃証言に驚いた様子だった。クジャクは数十メートルほどなら十分飛べるが、基本的にあまり大きな移動はしない性質。五箇氏は、
「本来は群れで暮らす鳥なので、単独でいるとしたらおそらく最近まで人に飼われていたものだろう。飼い主が飼いきれなくなって逃がしたものでは」
と話す。
鳥類の飼育に詳しい千葉県の獣医師に聞くと、「ある程度広い場所さえあれば、クジャクを飼うのはそう難しくありません」という。雑食性で、エサには養鶏用の飼料やコマツナなどを与える。難点は「春の発情期、夜に『ニャウ、ニャウ』ともの凄い声で鳴く」ことぐらいだとか。
なお五箇氏によれば、体は大きいが「基本的には臆病な生き物」なので、「よほど人に慣れていない限り突っついてきたりはしない」とのことだった。