政府が関西電力管内の電力ユーザーに昨夏ピーク比10%以上の節電に取り組むよう2011年7月25日から要請を始めた。関電の大飯原発1号機がトラブルのため停止するなど、「関電の供給力低下が新たな事態を迎えた」というのが要請の理由だが、関電が7月1日から15%の節電を求めているのに、政府がそれを下回る10%の節電しか求めないというのはわかりにくい。
しかも、「このままでは夏の電力需給がひっ迫する」と言って始めた関電の「でんき予報」は連日、供給力が需要を上回る「青信号」が続いている。関電は納得のいく説明をユーザーにすべきだ。
総合的判断で「10%以上」の節電要請で十分
異なる二つの節電目標が共存することについて、大阪府の橋下徹知事は「政府と関電がバラバラにやっていてグチャグチャ。本当に誰が段取り付けて調整やってるのかさっぱりわからない。末期症状だ」と、痛烈に批判した。橋下知事は関電の節電要請について、かねてから「原発の再稼動が目的ではないか」と指摘している。
実は政府(経済産業省)の内部では、6月頃から「原発停止で、今夏は東京電力以上に関電で大停電が起きる可能性が高い」との情報が飛び交っていた。発電電力量の5割近くを原発に依存する関電の場合、定期点検で停止した原発の再稼動が梅雨明けまでに間に合わなければ、電力不足に陥るというのだ。政府に早くからそう耳打ちしたのは関電自身という見方も出ている。
ところが菅政権による原発のストレステストの実施や、九州電力の不祥事などで11年夏の原発の再稼動は絶望的になった。そこで経産省としては、関電の今夏の電力需給を冷静に分析し、必要とあらば8月の盛夏に向け、より実効性のある節電を呼び掛けなくてはならなくなったのだ。
政府が節電目標を「10%以上」に設定した理由はこうだ。関電が大飯原発1号機の停止や、電力融通を受ける予定だった中国電力の火力発電所の停止などで、8月に電力が不足する割合は6.2%。これに「最低限必要」とされる供給予備率3%を加えると9.2%。トラブルが起きた中国電力の火力発電所が復旧すれば、不足分は3.9%にとどまるが、経済産業省はこれらを総合的に判断し、「10%以上」の節電要請で十分と判断したようだ。
「15%の節電をお願いしても、実際には5%」
これに対して関電は「個々の契約者の事情で節電できる範囲が異なるため、15%を目標としている」と説明する。今回、関電は7月1日からユーザーに呼びかけた節電の効果を初めて公表した。それによると、節電効果は約140万キロワットで、約5%の削減効果にとどまっている。「15%の節電をお願いしても、実際には5%しか協力してもらえていない。従って15%の旗は降ろせない」というのが関電の言い分だ。
ただ、現状で約5%(約140万キロワット)の節電効果がある事実は重い。罰則を伴う電力使用制限令で、大企業などに節電を強制している東電管内とは比べようもないが、あともう5%、つまりトータルで10%の節電を達成すれば、関電が想定する昨夏並みの猛暑でも、現状の供給力でなんとか乗り切れる計算になる。
関電が要請した15%の節電要請は、当初から「根拠があいまいで、過大だ」との指摘が自治体や経済界から根強い。関電の対応が注目される。