女子サッカー日本代表「なでしこジャパン」へ菅政権が国民栄誉賞を授与する方針を決めた。「政権浮揚のための政治利用だ」と反発も出る中、インターネット上では「授与自体には賛成だけど、菅首相が辞めた後にして」といった「折衷案」も提起されている。
枝野幸男官房長官は2011年7月25日、国民栄誉賞の授与意向を表明した会見で、「政治利用」批判について、「表彰で政権浮揚するなら、こんな楽なことはない」と反論した。正式に授与が決まれば19例目で、団体としては初となる。
「せっかくの頑張りを無にするに等しい」
枝野長官は、あくまで「政治利用」を否定したものの、当の菅直人首相がすでに「なでしこ」の政治利用を伺わす発言をしているだけに、説得力がどの程度あるのかは微妙だ。
菅首相は、「なでしこ」がワールドカップ(W杯)初優勝を決めた翌7月19日、衆院予算委員会で、初優勝について「私も(略)諦めないで頑張らなければならないと感じた」と述べた。得点を先行されても追いつき、「最後まで諦めない」戦いをみせた「なでしこ」にかけた発言だった。
公明党の山口那津男代表は、菅首相のこの発言を受け、「せっかくのなでしこジャパンの頑張りを無にするに等しい」と批判した。みんなの党の渡辺喜美代表も、授与方針が出た7月25日、「政治利用したいというのはいかがなものか」と苦言を呈した。
インターネット上では、「政治利用」以外の理由でも、「なでしこ」への国民栄誉賞授与に違和感を表明している人たちもいる。ツイッターなどを見ると、2008年の北京五輪で金メダルをとった女子ソフトボールチームや、野球のW杯ともいえるWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で06年と09年に連覇した日本代表などが国民栄誉賞をもらっておらず、「バランス上違和感がある」ということのようだ。
今回の授与方針は、こうした「バランス」論を押しのける形となり、団体としては初受賞となることも含め、「異例の厚遇」という印象を与えかねないようだ。その「異例」ぶりが、政治利用説を呼び起こしている側面もある。
あげたいけど「菅首相から授与では可哀想」
もっとも、基本的には「政治利用とか文句いってないで、素直に(国民栄誉賞を)あげようよ」といった調子のつぶやき・書き込みも多い。菅政権の「政権浮揚狙い」が気になる向きに対しては、「大丈夫だ。少々のことをしたって支持率あがりっこないから」と、安心して「なでしこへ授与」を喜ぶよう呼びかける人もいる。
それでも、「菅直人(首相)から国民栄誉賞貰うなんて不名誉極まりない」といった意見も根強い。「なでしこ」へ国民栄誉賞を出すのは良いとして、菅首相からもらったのでは「(なでしこが)可哀想」だとして、「早く首相交代を」ともとめるつぶやきもツイッターにあった。
7月25日の参院本会議で、菅首相の退陣3条件のひとつ、第2次補正予算が可決・成立した。民主党執行部や政権幹部(菅首相らごく一部を除く)は、残る2条件(特例公債法案、再生エネルギー法案)の成立を急ぎ、菅首相退陣へつなげたい考えだ。
「なでしこへの国民栄誉賞授与」については、急がずに次期政権にバトンタッチする手もある。もっとも、そんなことをしていると、いつの間か菅首相が「授与」を4件目の退陣条件にしてしまうかもしれない。