東日本大震災の被災地にあたる宮城県仙台市の新築分譲マンションの販売が復調してきた。
震災の影響で仙台市内でも、倒壊しないまでもヒビ割れたり傾いたりと修繕が必要なマンションや一戸建ては少なくなかった。そういった住居からの住み替え需要が増えているようだ。なかには即日完売した物件も出てきた。
月間の成約件数が震災前の1.5倍に
仙台市の新築分譲マンションが売れている(写真は、リクルート「SUUMO」東北版のホームページ)
野村不動産の「プラウド仙台榴ヶ岡」は震災前の2011年2月17日に第1期の47戸を販売。平均価格約3000万円の物件が、震災前までに完売。震災後の4月末に発売した第2期の7戸も即日完売した。
5月に売り出した「プラウド長町南ガーデンズ」も全40戸のうち、第1期の29戸が即日完売した。
同社は「もともと仙台市内に住んでいた人が住み替えるケースが多いようです」と話す。仙台市はこれまでもマグニチュード5~6の地震が起きていたこともあり、耐震性能の高いマンションは少なくない。今回の震災でも倒壊したマンションはなかったことから、堅牢さは証明されたようなものだ。
しかし、やはり古くなったマンションや住宅には不安があるようで、さらなる安心感を求めて、最新の耐震技術と地盤のよさが売りの新築分譲マンションを購入する動きに拍車がかかっているとみられる。
仙台市内のある不動産業者は、「震災直後は、しばらく取引が停滞するとみていたのですが、実際にはそうでもないようです。被災者が住宅を借りたり、中古や新築住宅を購入したりする動きが目立ちます。落ち着いてきた(5月の)連休明けくらいから、急に盛り上がってきたという印象です」と話す。在庫物件がそこをつきつつあるという。
リクルートの調べでは、仙台市の新築マンションのモデルルームへの来場件数は1~2月の月間平均が約1200件で、成約率はそのうちの10%だった。それが震災後の5月の来場件数は800件に落ち込みはしたものの、成約件数は180件と約1.5倍に。成約率は20%を超えた。
「SUUMO」の池本洋一編集長は、「購入者で多いのは『賃貸脱出組』ですね。賃貸物件で建物の構造に不安を感じた人は少なくないようです」と話す。売れ筋マンションの特徴は、「即入居」に「平置き駐車場」。それに、「意外に思われるかもしれませんが、仙台ではオール電化マンションが人気。電力不足よりも復旧の速さが優先されるようです」と、池本編集長はみている。