新キーワード「卒原発」や「縮原発」 「脱原発」とはどこがどう違うのか

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   「卒原発」か「縮原発」か――。東京電力の福島第1原発の事故をきっかけに、日本のエネルギー政策を見直す機運が高まり、従来の「反原発」や「脱原発」に加え、多様な価値観を表す新語が地方自治体や経済界から生まれている。

   「卒原発」も「縮原発」も、将来的に原発への依存度を減らし、再生可能エネルギーを増やしていこうとする考え方では「脱原発」と方向性が一致しているが、その違いは原発廃炉のスピード感にあるようだ。原発推進だった自民党もエネルギー政策の見直しに着手し、原発の新たなキーワードをめぐる議論が加速しそうだ。

「卒業」は前向きな語感?

   「卒原発」は、2011年7月12~13日に秋田市で開かれた全国知事会議で、滋賀県の嘉田由紀子知事と山形県の吉村美栄子知事の女性知事コンビが共同でアピールした。両知事は「廃棄物処理の困難さ、健康や環境へのリスクを勘案すれば、原発への依存度を徐々に少なくし、卒業できるような『卒原発』が望ましい」と表明。政府に国策として再生可能エネルギーの導入を加速するよう求めた。

   「卒原発」という言葉は、東電の原発事故後、滋賀県出身の武村正義・元官房長官が京都大学で行った講演の中から生まれたとされる。これに地元の嘉田知事が賛同し、6月の記者会見で「原発から卒業する『卒原発』を進めたい。『脱』はすぐに原発をやめる意味が強く、後ろ向きなイメージだが、『卒業』は前向きな語感。いつかは原発を卒業したい」などと述べ、「卒原発」をキーワードに掲げた。

   今回の2知事の共同アピールは、嘉田知事の考えに共鳴した吉村知事が呼びかけたという。両県とも原発は立地していないが、隣接県に原発がある点で共通しており、事故のリスクを抱えている。

   琵琶湖を抱える嘉田知事は「1400万人の近畿の命の水源を預かる知事として、原発のリスクは将来的にゼロにしたい」と発言。吉村知事も「原発は安全性、コスト面でこれまで考えられてきた有効なエネルギーではない。国は再生可能なエネルギーに方針転換すべきだ」との考えを示してきた。

   しかし、全国知事会議では、この「卒原発」の提案に対し、北海道の高橋はるみ知事が「自然エネルギー拡大のためにできることをするのは大賛成」などと述べたが、四国電力の伊方原発を抱える愛媛県の中村時広知事が「『卒原発』という言葉には違和感がある」と発言するなど異論が噴出し、知事会議としては、東電の原発事故について政府が説明責任を果たすよう求める緊急提言を行うことで一致したが、「卒原発」をめぐる議論は深まらなかった。

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