東京電力の株価が、2011年7月22日に一時643円まで上昇した。この日は7連騰とはいかず、終値は前日比47円安の543円で引けた。とはいえ、取引時間中に上場来安値の146円を付けた6月9日からわずか1か月半で4倍近くも急騰したことになる。
この上昇気配はいったい、いつまで続くのか。
「空売り」していた投資家が買い戻している
東電株は、7月21日までの6営業日連続の上昇で、終値で600円を目前にしていた。この間の上昇率は34%に達し、翌22日にはさらに上昇。朝9時過ぎには643円を付けたが、その後は利益を確保する動きが優勢となった。
東電株はすでに配当利回りを期待するような、長期投資の銘柄ではない。流動性が大きく(大量の売買高がある)、ボラティリティ(変動率)が高い、投機的な「マネーゲーム」の対象銘柄になってしまった。
マネックス証券のチーフ・ストラテジスト広木隆氏は、「短期で売買するヘッジファンドやデイトレーダーにとっては格好のトレーディング対象で、儲けのチャンス(損する可能性も)が大きい銘柄です」と話す。
いまの東電株の上昇は、「脱原発」で揺れた6月28日の株主総会を終えて「ひと山越えた」ところに、これも難航していた原子力損害賠償法(原賠法)の改正案がまとまりそうな気配が漂いはじめたことがきっかけだ。7月に入ると、ジワジワ上がりはじめていた。
7月21日には、民主党と自民党、公明党が原賠法の改正案に合意したことで、東電の存続の可能性が高まると、株価は大きく上昇。ゴタゴタが続いているものの、原発事故処理の行程表の第1ステップが終了したことで、事故処理が着実に進んでいることをアピールできたこともある。
東電株は、国有化や会社更生法の適用による経営破たんがささやかれるたびに、株価を下げてきた。「その間に空売りしていた投資家はたくさんいますし、そういった投資家がいま買い戻しているわけです」(マネックス証券の広木氏)。
株価がそのまま「動かなくなってしまう」
マネックス証券の広木隆氏は、「まだ、しばらくは上昇する可能性がある」という。「しばらく」とは、原賠法改正案が国会を通過するまでだ。
広木氏は、「法案が成立してしまえば、(投資の)材料が出尽くします。それによって一時的には売られるでしょうが、その後は落ち着くでしょう。原発の事故処理によほどのトラブルが起こらない限りは、そのまま(株価は)ほとんど動かなくしまう可能性もあるのではないでしょうか」と推測する。
原賠法改正案は来週中にも国会を通過する見通し。マネーゲームの終わりも近いということらしい。