「テレビは、番組で毎日節電を呼びかけてくるが、放送を日中一時休止すればいい節電になるのではないか」――こんな指摘がインターネットの個人ブログや「Q&A」サイトなどで今も続いている。
2011年3月の東日本大震災直後の「放送自粛」があっというまに終わり、いつのまにかクイズやバラエティ番組だらけの日常に戻ったことに対する、視聴者の苛立ちもあるようだ。
大口需要者としての節電責任は果たしているとテレビ局
NHKや民放在京キー局は、前年夏比15%減の節電が義務付けられている大口需要者にあたる。当然ながら各局で、スタジオ内の照明や冷房対策などに取り組んでおり、番組制作を比較的電力に余裕がある土日に移すところもあるようだ。
キー局などが加盟する日本民間放送連盟(民放連)の広瀬道貞会長は、5月下旬の会見で、在京キー局の節電対策について「15%削減はほぼ実現できる見込みだ」と胸を張っていた。
真夏の電力ピーク時に大きな影響を与えるのではないかといわれていたのが、NHKなどで放送される夏の全国高校野球選手権大会(甲子園球場)。これについては、いち早く関係者の間で決勝戦が夏の大会では初となる午前開始とすることが決まり、電力需要がピークを迎える午後の早い時間帯の試合を避けた。
テレビ局側はこのように、すでにいろいろな手立てを尽くしているというが、ネットでは「日中の放送の一時休止」「他局との輪番制放送」などの過激な意見が後を絶たない。テレビ局そのものの節電や放送上の工夫だけでなく、放送される番組の数が減れば、その分テレビをみる人も少なくなり節電効果が上がるのではというわけだ。
こうした指摘に対しては、「特定の番組が放送されなくなっても、同じ時間帯の別番組をみれば家庭の節電にはならない」との反論もあるが、「くだらない番組など放映する電気があるのならその間だけでも停止すればよさそうなもの」「年がら年中通販番組ばかり放送している民放BSも停波していい」といった賛成論も根強く、7月に入ってもネット上で書き込みが相次いでいる。
政府「テレビは必要な時以外、消しましょう」
中には、輪番制でなく、NHKを含めた全局が一定時間一斉に放送を休止する案を提起する人もいる。また、政府の節電呼びかけには「テレビは必要な時以外、消しましょう」とあるが、テレビが「消しましょう」と呼びかけたのは聞いたことがない、と不満をもらす意見も少なくない。
こうした指摘に対し、テレビ業界では、「テレビを家庭で消すことと放送を続けるということは別」(テレビ東京の島田昌幸社長)といった見方が支配的のようだ。島田社長は5月下旬の会見で、「こういう不安定な時こそ、私は放送を続けることが大事だと思っています」と語っている。
テレビ局は番組を放映しないと広告収入が入ってこない。そうした経営面からも「一時休止」「輪番放映」などは、簡単ではないのも事実だ。
もっとも異論もある。フジテレビ系の情報番組「とくダネ!」で司会を務める小倉智昭さんは、4月14日の放送で、「テレビ局(の節電対策)はどうなんだという話が絶対出てきます」と指摘。民放各局が輪番制で午後の時間帯に放送休止する対策もあり得るとの考えを披露していた。
政府の節減呼びかけサイト「節電.go.jp」によると、テレビ利用時間の3分の1程度あるとされる「ながら見」をなくしてその間テレビを消し、省エネモード設定と「画面輝度を下げる」の3点を実行すると、家庭で「2%」の節電効果があるとしている。ちなみにエアコンの設定温度を2度上げた場合は、「10%の効果」なのだそうだ。