「マーゴン」がやばい――その勢力の大きさや予想された進路から、ネット上では少なからぬ騒ぎを巻き起こした台風6号。特に今回は掲示板やツイッターなどで「マーゴン」という台風の「アジア名」が連呼され、記憶に残った。
日本では毎年、発生順に「台風○号」と呼ばれている台風だが、実は台風には一つ一つに、「アジア名」と呼ばれる国際的な「名前」が付いている。いったいこの名前は誰が、どのような基準で付けているのか。
アジア各国由来の名称を順繰りに使用
台風とは東アジアで発生する強い風力の熱帯性低気圧のこと。同じ気象現象がマレー半島以西ではサイクロン、米国ではハリケーンと呼ばれる。
台風の「名前」を決めているのは、日本などアジアを中心に14か国の政府が参加する国際防災組織「台風委員会」だ。
台風の発生域にはグアムなど米国領海も含まれていることもあり、米国は、ハリケーンなどと同じく人名風の名前を付けていた。しかし、2000年から北西太平洋・南シナ海で発生した台風については、この台風委員会がアジアの言葉で名付けることとなった。これがいわゆる「アジア名」だ。
命名は地域内の28の言語による140の名前をあらかじめ用意し、それを順繰りに使用する方式。台風は年に25個ほどのペースで発生するので、おおよそ5年で名前が一周する計算になる。
名前のレパートリーは孫悟空から来た「ウーコン」(中国)、花を意味する「ボーファ」(カンボジア)、嵐の神を指す「イーウィニャ」(ミクロネシア)など、バラエティ豊か。なお大きな被害を招いた台風の名前については、別のものに差し替えてその後は使用しない。
今回の「マーゴン(Ma-on)」の名付け親は香港で、同地の「馬鞍山」に由来したものだ。
日本語から「テンビン」「ヤギ」など
とはいえ、日本ではまだなじみが薄い「アジア名」。気象庁天気相談所によると、
「確かにテレビや新聞などではあまり目にする機会がありませんが、船舶関係者の方などには、台風同士の区別が楽なのでアジア名が比較的よく使われているようです。気象庁としては積極的に使っていきたいと考えていますので、こちらから発信する情報にはアジア名も併記するようにしております」
なお日本語から付けられた名前は「テンビン」「ヤギ」「カジキ」など、全て星座にちなんでいる。台風と同じく自然界の存在で、人々に親しまれているというのがその理由だ。特定の企業名や商標などと一致しないのはもちろん、日本人以外にも発音しやすく、また他の地域で不快な意味になったりしない、という点を考慮して選んだという。
ちなみに15日にフィリピン沖で発生した、台風7号の名前は日本発の「トカゲ」。ただし勢力は弱く、翌日には早くも消滅してしまったという。