放射性セシウムに汚染された稲わらが肉牛に与えられていた問題の影響が広がっている。
放射性物質が食品衛生法の暫定規制値を上回った牛が広く流通していたことが3連休中に広く知られるようになり、連休明けには和牛の価格が急落。翌日には反発しているものの、消費者に不信感は広がっており、予断を許さない状況だ。
連休明けに卸価格一時半値も
2011年7月19日までに、福島県産の肉牛29頭から、暫定規制値(1キロあたり500ベクレル)を超える放射性セシウムが検出されており、政府は同日、福島県全域の肉牛の出荷停止を佐藤雄平知事に指示した。19日時点で、福島、山形、埼玉、新潟4県の農家から、汚染された疑いがある肉牛が計650頭出荷され、鳥取、宮崎、鹿児島、沖縄の4県を除く全国43都道府県で流通していたことが明らかになっている。いわば、日本中どこでも「汚染牛」に遭遇してもおかしくない状況だ。
この影響で、和牛の価格が急落。東京都中央卸市場食肉市場の3連休明けの7月19日の取引では、主力の去勢牛「A-4」クラスの1キロあたりの価格は1キロあたり607円で、連休前の7月15日(1379円)に比べて57.1%も値下がりしている。さらにグレードの高い「A-5」クラスも、1772円から1379円へと、22.1%値下がりしている。
「A-4」クラスの価格は、6月1日に1598円、6月15日に1559円、7月1日に1623円と、ほぼ横ばいの状態が続いてきた。福島県内で汚染牛が確認されたのは7月8日のことだが、汚染牛が多数確認されたのが連休中だったことから、連休明けに急落したものとみられる。
和牛全般が敬遠される
7月19日の取引では、汚染牛が確認された4県で生産された肉牛は取引されていない。だが、汚染された稲わらは青森、山形、福島、新潟、茨城、群馬で流通していたことが確認されており、今後「汚染牛」がさらに広い地域で見つかる可能性が高いことから、和牛全般が敬遠されている形だ。
7月20日の取引では、A-4が60.3%値上がりして973円、A-5が12.5%値上がりして1551円と大きく反発しているものの、連休前の水準には戻っていない。
なお、農林水産省では、国産牛肉の全国平均小売価格を週ベースで公表しており、ここ1年ほどは国産牛肉(冷蔵ロース)の価格は100グラム650円~670円の幅で収まっており、偶然にも、震災が起きた週(3月7日~11日)と最新のデータがある週(7月11日~15日)の価格は、両方とも665円だ。
消費・安全局消費・安全政策課の担当者は、
「データが語ることがすべて」
と、今後の見通しについてはコメントを避けたものの、今後、ここ数日の卸市場の動向が反映される形で値下がりする可能性が高い。