企業や家庭への節電要請が、西日本へと波及する。政府は関西電力管内を含む西日本エリアで、2010年夏のピークと比べて10%以上の節電を求める。
東北電力や東京電力管内の大口需要家に課した、強制力のある電力使用制限令の発動は見送られたので、「10%以上」は努力目標のようなものだが、企業の生産活動や家庭生活への影響は避けられない。
このままだと供給余力が6.2%不足?
そもそも、関電管内を含む西日本エリアは2011年6月までは原発が再稼働できるものとして夏の電力需給を見込んでいた。それが菅直人首相の「再生エネルギーへの転換」宣言や、それに続く「脱原発」などで再稼働できなくなったことが痛い。
これに、稼働に向けて調整運転中だった関電大飯原発1号機が7月16日に蓄圧タンクのトラブルで停止したことが追い討ちをかけ、さらに関電管内に70万キロワットもの電力を融通する予定だった中国電力管内の三隅火力発電所(島根県浜田市)がボイラーのトラブルで停止。関電管内の電力不足は決定的となった。
関電の原発は現在11基中、6基が稼働。しかし、7月21日からは高浜原発4号機が、翌22日には大飯原発4号機が相次いで定期点検に入り、稼働している原発が4基に減ることもある。
大飯原発1号機の停止によって、関電の7月末の電力供給力は従来見込みの約3100万キロワットから約2983万キロワットに低下した。8月も、3049万キロワットから2931万キロワットに落ちる見通し。政府の予測によると、最大電力需要の3138万キロワットに対して、予備率(供給余力)6.2%が不足する。
経済産業省の電力事業担当者は「関電管内の予備率が6.2%のマイナス、西日本5社でも1.2%のマイナスが見込まれることから、10%の節電をお願いするしかないと判断しました」と説明する。
節電しないと、「関電管内はかなりヤバイ状況です。融通しあってしのぐしかありません」と話す。
電力使用制限令の発動、時間的に間に合わない
東北電力と東京電力の管内は、7月1日から大口需要家に15%の節電を義務付ける電力使用制限令が発動された。東電管内では、猛暑の影響で15日には最大電力が4627万キロワットになったが、東電の供給力は約5000万キロワット超が確保されていた。予断は許さないが、関電への電力融通が取沙汰されるなど、電力使用制限令の「効果」とみていいだろう。
経産省は、関電管内に電力使用制限令を適用しない理由について、「東電の場合は火力発電所などを復活させてフル稼働して(電力を)確保している状況。それに比べれば、まだ電力融通や節電努力の範囲でなんとかなるとみています」という。しかし、発動できない一番の理由は、「(発動を)準備しているうちに夏が終わってしまう」(電力事業担当者)からだ。
関電の森詳介会長は7月11日に、「(稼働中の発電所が)万全に運転できれば、なんとかいけそうだ」と、この夏の電力供給の見通しを語っていた。