サッカー女子日本代表「なでしこジャパン」が、ワールドカップ優勝で脚光を浴びる一方で、メンバーの大半はアマチュアで収入が少なく、アルバイトをしながら練習を続ける選手もいるという。
男子の場合はJリーグがあり、国内でもプロとしてプレーする選手は多いが、年俸面ではプロ野球と比べると低い。サッカーと野球、2つの人気プロスポーツで差が生じるのはなぜか。
プロ野球の平均年俸がサッカー日本代表クラス
イタリアのサッカー1部リーグ(セリエA)の強豪、インテルミラノは2011年7月1日、日本代表の長友佑都選手の完全移籍が決まったと発表した。5年契約で年俸200万ユーロ(約2億3400万円)と伝えられた。これは日本人選手として過去最高額となる。
国内でプレーする選手の年俸はどうか。Jリーグ1部(J1)のチームに所属する選手で年俸が1億円を超えるとされているのは、外国人選手を除くと、中村俊輔選手(横浜F・マリノス)や遠藤保仁選手(ガンバ大阪)、田中マルクス闘莉王選手(名古屋グランパス)など、ひと握りだ。日本代表クラスでも5000~6000万円程度で、若手ともなれば数百万円台の選手も少なくない。
Jリーガーに比べて、プロ野球選手の年俸額はぐっと上がる。11年5月に日本プロ野球選手会が発表した、選手会に加入する支配下選手734人の年俸調査結果によると、1億円以上の選手は12球団で80人となった。北海道日本ハムファイターズのダルビッシュ有投手が、推定年俸5億円でトップとされる。選手の平均年俸も3931万円に達し、最も高い阪神タイガースは5546万円とサッカー日本代表レベルの年俸と互角だ。
単純に比較はできないが、営業規模ではJリーグの方がプロ野球よりもずっと小さい。Jリーグ機構が発表している最新の営業報告資料を見ると、2009年度にJ1に所属したチームの平均営業収入は33億100万円で、最も高収益だったチームでも64億3200万円だ。これに対してプロ野球の球団は収支を公表していないが、週刊東洋経済は2010年12月4日号で、読売ジャイアンツの売上高が推定250億円、阪神タイガースが同150~200億円と試算した。この数字を見る限り、2つのスポーツの市場規模はかなり開きがあると言えそうだ。
欧州リーグ、サッカービジネスは「ケタ違い」
スポーツジャーナリストの木崎伸也氏は、Jリーグとプロ野球を比較した場合に、試合数の違いが年俸に与える影響を指摘する。J1では、リーグ戦や「天皇杯」のようなカップ戦を合わせても年間50試合程度だが、プロ野球は公式戦だけで144試合もある。観客からの入場料収入や、球場で販売されるグッズの売り上げなどで差が出るのも当然だろう。
欧州のトップリーグと比べてもJリーグの年俸は低い。木崎氏によると「ドイツの場合、ユース上がりの控え選手でも、年俸は数千万というのは珍しくありません」。これはJリーガーの主力、場合によっては代表クラスと同程度の収入規模にあたる。
日欧のリーグで大きく異なるのは、テレビ放映権収入だ。Jリーグの場合は機構から各球団に均等配分され、その金額は約2億円ほどだという。これに対して欧州の人気リーグとなれば、数千億円規模に達する。人気があるチームは放映権料も高くなり、テレビでの露出が増えて多くの視聴者獲得につながればユニホームに広告を入れるスポンサーもついてくる。木崎氏は、ドイツ・ブンデスリーガの有力チーム、バイエルン・ミュンヘンを例に挙げ、「ユニホームの胸のあたりにスポンサー名を入れる広告料は20億円ほど」だと話した。日本でも同様のケースはあるが、金額は「億に届いていないのではないでしょうか」。
放映権料による収入は、プロ野球でも大きな比重を占める。米国のアメリカンフットボールなど人気スポーツが選手に高額年俸を提示できるのも、放映権料の存在が大きい。
市場規模や収益構造の差が、プレーヤーの年俸にはねかえってきていると言えそうだ。