伊フェラーリの日本法人フェラーリ・ジャパンは、同社初の4WD(4輪駆動)の新型車「FF(フェラーリ・フォー)」を日本国内で初公開した。V型12気筒、排気量6262ccのエンジンをフロントミッドシップに搭載し、最高出力660馬力、最高速度335キロ。性能だけでなく、価格も3200万円と破格だ。
フェラーリとして4WDが初めてなら、4人乗りのスポーツカーも初めて。初の4シーター4WDツアラーは「友人や家族同士でスキーに行ける初めてのフェラーリ」として、マニアの注目を集めている。
魂に響く芸術品のようなクルマ
フェラーリは独ポルシェと並ぶ名門スポーツカーの専門メーカーだが、これまで生産したクルマは後輪駆動ばかりで、4WDはなかった。ライバルのポルシェが1980年代からポルシェ959、ポルシェ911カレラ4など、4WDモデルを積極的に開発してきたのと対照的だ。フェラーリには「スポーツカーはミッドシップエンジンでリヤを駆動する」という哲学があり、1980年代以降もテスタロッサ、F40、F50、エンツォと、この伝統を守り続けてきた。
それだけに今回のFFは、従来のフェラーリの常識を破るエポックメイキングなモデルといえる。「FF」のネーミングは、日本では前輪駆動(フロントエンジン・フロントドライブ)の略で使われるのが一般的だが、フェラーリ・フォーの「4」が4WD、4シーターを表しているのは言うまでもない。注目の4WDシステムはトルク配分がスポーツカーらしくリヤ寄りで、路面状況によってフロントに必要なトルクを配分する。日本上陸後の自動車専門誌のテストで、FFの4WDシステムがどう評価されるか。
ボディーデザインは名門ピニンファリーナが担当。4シーターだが2ドアで、フェラーリは「流麗なスタイリングは従来のGTスポーツカーコンセプトを覆し、自動車界に真の改革を浴びせる4シーターモデル」と説明。「エレガントで美しく、魂に響く芸術品のようなクルマ」と、美しさをアピールしている。
既に受注を始め、10月ごろから納車
日本発売に合わせて来日したフェラーリのモンテゼモロ会長は「どんな状態の道でも運転しやすく、4人で食事にも出掛けられるユーティリティーの高いクルマ。660馬力を誇る本物のスポーツカーだ」と、胸を張った。既に受注を始めており、2011年10月ごろから納車も始まるという。
FFの最大のライバルは、車格の違いはあるが、同じく4シーターで4WDモデルもあるポルシェ・パナメーラだろう。2009年にデビューしたパナメーラは、ポルシェ初の4ドアのフル4シーターで、スポーツセダンとクーペが融合したようなスタイルが特徴だ。こちらはV型8気筒、4806ccで、トップモデルのターボが500馬力。価格はノンターボのパナメーラが1000万円台、ターボでも2000万円台で、FFとは性能、価格の両面で差があるが、4シーター、4WDのスーパースポーツモデルという共通項がある。
国産車ではライバル的な存在はない。しいて探すなら、こちらも車格が違うが、4シーター、4WDという点で日産GT-Rくらいだろう。