「第18回 スクウェア・エニックス マンガ大賞」の特別賞を受賞し、雑誌にも掲載された作品が「ぱくり」ではないのかという指摘がネット上に出た。これを受け、スクウェア・エニックス社は、2011年7月14日、受賞を取り消すと発表。作者も謝罪文を掲載した。
松浦大貴氏作の「コンプライアンス 絶対法隷都市」という作品で、「月刊少年ガンガン」の2011年8月号(7月12日発売)に掲載された。舞台は近未来。企業の違法行為を内部告発し、命を狙われる女性を「法務局」の人物が守り抜くといったストーリーだ。
設定だけでなく、台詞まで一緒
なかなか斬新なストーリーなのだが、掲載誌が発売されてすぐにネットで「『マルドゥック・スクランブル』のぱくりではないのか」という指摘が出た。
「マルドゥック・スクランブル」は人気作家・冲方丁(うぶかた とう)さんの近未来SF小説シリーズで、映画化され全国公開されるほど人気がある。5月に発売された短編集の中に、同じように内部告発で命を狙われる女性を「法務局」の人物が守るという作品があった。
設定だけでなく、細かいストーリー展開も似ていて、全く同じ台詞まである。偶然と言えるレベルではなく、「コンプライアンス」が「マルドゥック」を盗用したのではないかと見られる。
これを受け、ガンガン編集部は7月14日、ガンガン公式HPに謝罪文を掲載。まだ調査を進めている段階とするも、作中にいくつかの「類似点」があることを確認し、松浦氏もこれを認めたといい、賞の取り消しを発表した。
「創作者としてあるまじき行為をしてしまった」
未然に防ぐことができなかったことを詫びるとともに、再発防止に努めるとし、「冲方丁先生をはじめ、株式会社早川書房様、読者様、ほか関係者の皆様に、多大なるご迷惑をお掛けしましたことを深くお詫び申し上げます」と謝った。
松浦氏も自身のブログに謝罪文を掲載した。「漫画家デビューという功を焦るあまり、冲方丁先生の作品の内容に着想した創作を行うという、創作者としてあるまじき行為をしてしまったと猛省しております」と関係者に謝罪。責任をとるために賞金160万円の返還と、商業誌や同人誌、ネットなどでの一切の創作活動を自粛し、ネット上の創作物を全て削除するとした。「今回のような過ちを二度と犯さないことを宣誓致します。本当に申し訳ございませんでした」と改めて謝罪。松浦氏のHPも既に閉鎖されてしまっている。
今回の騒動について、ネットでは「有名どころからよくパクる気になったな」「編集もすべての本読破してるわけじゃないから見抜くのは無理だな」といった反応が寄せられている。