(ゆいっこ花巻支部;増子義久)
「お世話になりました。」「これからが大変。暑さに負けないで頑張って…。」東日本大震災で被災し、花巻市内の温泉施設などに一時避難していた人たちの仮設住宅への引っ越しがピ-クを迎えている。4月時点、温泉施設だけで233世帯(497人)を数えた被災者は7月に入って141世帯(244人)に半減。今月中には「仮設完成待ち」の一部を除いてほとんどの被災者が退去する見込みだ。
15日、大沢温泉自炊部に避難していた倉沢トメさん(91)と越田ケイさん(73)の2人が3か月以上の避難所生活にピリオドを打って、ふるさとの大槌へ。「花巻の皆さんには本当に良くしていただきました。この恩は一生忘れません」―。残留組の被災者や温泉従業員、市の相談員らに別れを告げる2人の眼には涙が…。最も多かった時には39世帯(93人)いた被災者はこの日で11世帯(17人)に減り、従業員たちも「身内みたいなお付き合いをさせてもらったので、寂しさもひとしお。とにかく生活の再建に向けて頑張ってほしい」と別れを惜しんだ。
一方、被災地の仮設住宅建設も山場を越え、あちこちで入居作業が慌ただしく続けられている。用地難のために建設が遅れていた大槌町の仮設住宅は全部で48カ所。市街地の平坦地が壊滅的な被害を受けたため、ほとんどは山あいの田畑を埋め立てて建設した。遠い所では車で20分以上もかかり、周囲に商店が1軒もない所も。
大槌川の上流に向かって車を約15分走らせると、山を背にした「大槌第2仮設住宅」(40戸)が目に飛び込んでくる。佐々木市蔵さん(82)夫妻は6月17日に入居した。4男4女の8人きょうだいの長男。「津波で妹2人の家族6人と2番目の弟の7人の命を奪われた。賑やかな大家族に育ったが、今はかあちゃんと二人っきり」と市蔵さん。4畳半2間と台所、風呂付。2人だけの生活には十分の広さだが、将来への不安は尽きない。「買い物は魚や野菜を積んだ移動販売車が来るだけ。何よりも周りに知った人がいないのが辛い」
倉沢さんがこの日入居したのは佐々木さんの近く仮設住宅。一人住まいの倉沢さんは「一番の心配は買い物。この年で車は運転できないし、自転車にも乗れないし…。90過ぎのばばあがこれから先、生きていけるだろうか」と不安を隠せない。仮設住宅での孤独死の例がすでに報告されている。「仮設後」の支援のあり方が問われている。
「ゆいっこ」は民間有志による復興支援組織です。被災住民を受け入れる内陸部の後方支援グループとして、救援物資やボランティアの受け入れ、身の回りのお世話、被災地との連絡調整、傾聴など精神面のケアなど行政を補完する役割を担っていきたいと考えています。
岩手県北上市に本部を置き、盛岡、花巻など内陸部の主要都市に順次、支部組織を設置する予定です。私たちはお互いの顔が見える息の長い支援を目指しています。もう、いても立ってもいられない───そんな思いを抱く多くの人々の支援参加をお待ちしています。
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