「横から目線」で選手らの信頼得る
それは、佐々木則夫監督がケガをしたとき、選手らが動揺してしまったことだ。男子の場合、監督のケガに動揺する選手はまずいない。そのことから「男女では気を配るポイントが違う」と感じたという。逆に言えば、日本人女性には、「仲間を思いやり共感する心」があるということであり、その女心に寄り添い生かせれば、すごいパワーになる、という確信だった。
その確信から生まれたのが、選手と同じ目の高さで接する「横から目線」という指導法だ。著書発行元、講談社の担当編集者は、こう読み解く。
「男だから、指導者だからといった『上から目線』でなく、部下の意見もよく聞き、ほめて自信を持たせるやり方です。選手と同じ目線で見る新しいタイプで、男性の監督では少ないと思います。明るいプラス思考でもあり、イングランド戦に負けたときも、監督は、選手たちが過度に萎縮しないよう、あえて叱りませんでした」
佐々木監督は、普段からとても気さくで、オヤジギャグで選手らを和ませるのがうまいという。試合前には、自分の好きなお笑い芸人のビデオを選手たちに見せていたようだ。
著書でも、その「横から目線」ぶりを示すように、妻の淳子さんが寄せた一文で、監督は自然に考えさせるような話し方をすると語っている。娘のサッカー練習を手伝ったときも、その指導ぶりが評判だったそうだ。
ただ、担当編集者は、サッカーについては、とてもまじめだと言う。妻の淳子さんも、サッカーのことになると感情的になるので忠告したほどだと明かす。もっとも、自分の意見にこだわっているわけではなく、あくまでも目標達成にこだわっているからだという。試合などで、厳しい表情で選手に向き合っているのも、そんなこだわりがあるからのようだ。