世界に響き渡った「なでしこジャパン」の大金星だった。女子サッカー・ワールドカップで日本が大会3連覇を狙う本命ドイツに1-0の勝利。メジャースポーツへの大きな手がかりをつかんだ。
「相手がドイツと決まったとき、日本は失うものはない、と思っていました。とにかく思い切ってやろう、と」
選手たちは腹をくくって試合に臨んだ。前後半はともに得点なし。延長後半3分、丸山が決勝のゴールを決めた。120分に及ぶ激闘だった。
「うれし泣きをしました。こんなに感動したのは久しぶり」
主将の澤穂希は興奮していた。値千金のゴールを奪った丸山桂里奈も声が上ずっていた。
「チーム一丸となってのゴールでした」
ドイツとは2008年の北京五輪で3位決定戦を戦い完敗した苦い経験がある。以来、「打倒ドイツ」は、日本の悲願でもあった。
「選手たちを誇りに思います。3年間の成果が出たと思う」
佐々木則夫監督の言葉には苦労のあとがうかがえた。
「苦しいときには被災者のことを思え」
実は、佐々木監督はドイツ戦の前、選手に東日本大震災のビデオを見せた。「本当に苦しいときに被災者のことを思え」というメッセージだった。
試合後、その監督の思いに呼応したように、地元メディアは「震災で影響を受けたが、それを不屈の闘志で克服した」と報じた。
決勝ゴールの丸山は東京電力の元社員。原発問題が持ち上がったとき、自身のブログに「東電は悪くない」と書き込んだ。当然のごとく非難が浴びせられた。「詳細も分からず書いたうかつさを悔いた」と謝った。
そんな丸山のプレーを現地の報道は「夢のようなゴール」とたたえた。