「信じられないパスサッカー」。サッカー女子W杯で、なでしこジャパンが強豪ドイツを撃破したことに、欧米メディアから称賛の声が出ている。しかし、ある弱点があり、準決勝のスウェーデン戦では、それが狙われるというのだ。
延長戦も、後半に突入したところだった。キャプテンのMF澤穂希選手(32)がゴール右に絶妙なパスをすると、そこに途中出場のFW丸山桂里奈選手(28)が絶妙のタイミングで飛び込んだ。
専門家「身体能力の高さでまだ差がある」
日本が、大金星につながるシュートを決めた瞬間だ。2011年7月11日未明の準々決勝は、そのままゴールを守り切り、大会3連覇を狙うホスト国ドイツに1-0で勝った。
7連敗中だったドイツを破って、初のベスト4入り。報道によると、この快進撃に、ドイツのナイト監督は、「日本は規律正しく、攻めようとしたが戻りが早かった。ボールの扱いのうまさには感心した」と賛辞を送った。また、欧米メディアもなでしこサッカーを称賛し、澤選手のプレーについて独メディアは「夢のようなパス」と表現。また、スウェーデン紙も、「女子サッカー界のバルセロナ」だと警戒し、14日未明の準決勝は厳しい戦いになると予想している。
その巧みなパスワークで、日本は、ボールの支配率が54%に達した。しかし、シュート数をみると、日本が9本なのに対し、ドイツは23本と圧倒している。前半はシュートが5本ずつと互角だったため、後半に激しく攻め込まれた形だ。
なでしこサッカーは、これで本当に欧米並みに強いと言っていいのか。
サッカージャーナリストの後藤健生さんは、日本が強くなったといっても、まだ弱点があると指摘する。
「女子サッカーは、身体能力のある選手をそろえたチームが強い傾向にありました。アメリカなどがその例です。ヨーロッパなども、次第にこうした選手をそろえてきています。ところは、日本は、女子スポーツでサッカーはまだ少数派なので、そうした選手をそろえられるわけではありません。そこに弱点があります」
得意のパスサッカーを徹底すれば勝機
例えば、対戦チームが、ロングボールを蹴ってきたときだ。後藤健生さんはこう言う。
「それでゴール前まで走らされれば、身体能力の高い欧米選手に対抗できなくなります。ゴール前でセンタリングを上げられたり、ロングシュートを打ってきたりするときも同様です。イングランド戦で日本が負けたのは、弱点が狙われたからですよ」
ドイツ戦で日本が勝ったのは、ドイツがチャンピオンの誇りで正攻法のつなぐサッカーをしてきたからではないかという。
また、後藤さんは、ゴールキーパーも弱点になりうるとする。
「身長が低いですし、瞬発力にも不安があります。たとえ予測したとしても届かないので、なんでもないシュートでも、ゴール隅なら入れられてしまうでしょう」
とはいえ、戦術・技術的な日本の女子サッカーでも、得意のパスサッカーを徹底すれば勝機があると指摘する。
「ゴールキーパーが丹念に攻撃をはね返し、ボールを取ったらパスを徹底する。それしか方法がないでしょう。ですから、ゴール前でミスしない、ロングボールを蹴らさないようプレッシャーを与える、などが大事です。少しでもボールを持っている時間を長くし、いかに集中力を持続させるかですね」
準決勝のスウェーデン戦では、日本の弱点が再び狙われる可能性は高い。そんな中で、日本が勝ち抜く可能性について、後藤さんは、「スウェーデン戦は、五分五分の戦いになるのでは。それに勝って、さらに日本が優勝するのは、かなり難しいですが、不可能ではないと思います」と話している。