菅直人首相が急きょ打ち出した「ストレステスト」(耐性試験)。それを踏まえた原発再稼動への政府の統一見解が2011年7月11日に発表された。
まず定期検査で停止中の原発で、再稼働の可否を判断する「1次評価」を実施し、その後すべての原発で、運転継続の条件となる「2次評価」をする。この2段階方式で原発の安全性を確認するというのだが、そこに「ストレステスト」はどんな形で導入されるのか。
テロや航空機の墜落も想定する
福島原発事故を受け、EU(欧州連合)では6月1日から、想定以上の地震などが起きた場合にどれだけ耐えられるかを測るストレステストを実施している。このEU版を参考にした安全評価基準を、新たに内閣府原子力安全委員会の確認のもとに作るという。統一見解では「欧州諸国で導入されたストレステストを参考に、新たな手続き、ルールに基づく安全評価を実施する」と明言している。
欧州委員会が発表している実施内容によると、EU版のテストではまず、電力会社実施した安全検査の報告を、各国の規制機関がチェックし、欧州委員会が組織する専門家7人のチームが検証を加え、最終報告書をまとめる。
検査では、(1)想定以上の地震や津波が起きたときの原発設備への影響、(2)自然災害、航空機墜落、テロ攻撃などあらゆる脅威が原因となって複合的に起こりうる安全機能の喪失の影響、について評価を行う。(3)そして冷却機能喪失など深刻な事故をどのように防ぎ、どう対処できるかを評価する。
これを踏まえ、設計の条件が満たされているか、基準を超えた耐久性があるかなどを報告。事故が起きた場合に原子炉の制御、燃料の冷却、放射性物質の漏洩防止といった安全機能を維持させられることを証明しなくてはいけない。
検査は危機が起きた場合を想定してコンピューター上で解析が行われるものとされ、EUのテストはあくまで余力を調べる「体力チェック」の位置付けだ。もっとも、「余力チェックだけで安全といえるのか」など、これを再稼働の前提条件にするのはおかしい、といった指摘もされている。