沖縄県の那覇空港ではいま、「不発弾の機内持ち込みは出来ません」といった館内放送が流れている。修学旅行で沖縄を訪れた男子高校生が拾った不発弾を持ち帰ろうとしたことを受けた対応だ。
那覇空港では、2011年6月下旬から、館内放送だけでなく、不発弾について注意を促す新しいポスター50~60枚も張られている。ポスターには「不発弾」の文字が大きく躍り、手榴弾の絵などとともにかなり目立つ仕上がりとなっている。
爆弾ではなく機関銃などの弾
不発弾といえば、処理する際に住民が避難する様子がニュースで報じられる、といった印象が強い。第2次世界大戦中の米軍の艦砲弾などは今も爆発する危険性があるのだ。たとえば沖縄県では2010年度、住民避難を要する不発弾処理件数は51件にも及んでいる。
今回、那覇空港の検査場で2011年6月中旬に男子高校生の手荷物から見つかったのは、長さ8~13センチの計6発だ。もっとも、「爆発しなかった爆弾」ではなく、機関銃などの弾だった。「不発射弾」と呼ばれることもあるが、国や沖縄県などでつくる沖縄不発弾等対策協議会によると、不発弾であることに変わりはない。
若者らが海岸で拾った銃弾の不発弾をアクセサリーのようなつもりで飛行機内に持ち込もうとして検査場で発見されるケースは、那覇空港では年5、6件程度ある。今回の6月のケースは多くのマスコミが報じたこともあり、あらためて注目を集める形となった。
国土交通省の那覇空港事務所によると、従来も各航空会社が不発弾持ち込み禁止についても触れた注意書きを張るなどしていたが、今回はあらためて空港事務所が不発弾に絞ったポスターをつくり、館内放送と合わせて注意を呼びかけるようにした。
同事務所の和田泰久次長は「不発弾の危険性を改めて知ってもらい、機内持ち込み防止は勿論、暴発事故防止にも役立てば」と話している。
銃弾でも「基本的には殺傷能力がある」
「銃弾の不発弾」について、「なんだ、爆弾や砲弾じゃないのか」と軽く考えるのは間違いだ、と指摘するのは先の沖縄不発弾等対策協議会だ。担当者は「火薬の状態にもよりますが、基本的には殺傷能力がある、と警戒するべきです」と注意を促す。
また、不発弾という言葉のイメージについて、沖縄以外のいわゆる内地の人の間では、「イコール爆弾」という印象が強いのでは、と指摘した。銃弾の場合も不発弾の一種で危険なものだ、とピンと来ない人も多いのではないかというわけだ。
戦争中、空襲は日本各地で行われたため、沖縄以外でも爆弾の不発弾処理は最近でも行われている。ローカルニュースで目にする機会もありそうだ。一方、「国内唯一の陸上戦戦場」といわれる沖縄では、銃弾の不発弾も多数あり今でも見つかるものの、「内地」では少ないため情報に触れる機会もあまりなさそうだ。
ちなみに、1972年度から2008年度までの全国の「不発弾等延べ処理件数」のうち、沖縄県が占める割合は約31%(重量では41%)だった。08年度だけみると、沖縄は全国の件数の58%(重量で56%)となっている。
同協議会では、これまでも沖縄県内向けに不発弾発見時の届け出の呼びかけを行ってきたが、今後は観光客の目につくところにも力を入れてポスター掲示などを行っていく予定だ。